運転資金とは?不足する原因と必要金額の計算方法、6つの調達方法まで徹底解説!

運転資金とは?不足する原因と必要金額の計算方法、6つの調達方法まで徹底解説! 基礎知識

運転資金とは?

会社が事業を運営していくためには、ヒト・モノ・カネの経営資源が必要です。

中でも運転資金は、会社経営を続けていくために非常に重要なものです。
業況がよくても、運転資金を把握していないと黒字倒産してしまうこともあります。

そこで今回は、運転資金とは わかりやすく概要や計算方法、資金調達手段について紹介します。
運転資金について詳しくなることで、安定した会社経営を実現することができるでしょう。

運転資金とは

運転資金とは、事業を継続させるために必要なお金です。会社経営をしていると、さまざまなお金がかかります。代表的な運転資金は、仕入れや設備投資、人件費などに充てるお金です。

会社経営をおこなうために、運転資金は切っても切り離せない関係にあります。

運転資金の内訳

変動費

変動費とは、売上の増減によって変動する費用のことです。材料費・仕入費・賃金・商品の運搬代などが含まれます。売上高を増加させるためには、その分製造原価や商品仕入を増やさなければならず、必要資金が増加する傾向にあります。
例えば、人件費であっても人材派遣業などの場合は、変動費(売上原価)に該当します。

固定費

固定費とは、売上高の増減に関わらず一定でかかる費用です。従業員の賃金や家賃、リース料がこれに当てはまります。売上がゼロであっても発生する費用という考え方もできます。金額は多少変動することはありますが、月々一定の金額がかかる費用を固定費に分類します。

ちなみに、売上高から変動費を控除した金額を売上総利益(粗利)と言い、固定費を売上総利益率で除した(割った)金額が、その会社の損益分岐売上高になります。

運転資金の種類

種類

運転資金にはいくつか種類があります。運転資金の使い道としてどんなものがあるのかを知っておくことは、資金繰りを考える上で有効でしょう。

経常運転資金

基本的に運転資金と言うと、この経営運転資金を指すことが多いです。
現状と同じ状態で事業運営をするために必要なお金で、前述した事務所費用、人件費、原価など恒常的に発生する支出の支払いに割り当てられます。

経常運転資金は、以下の計算式で算出します。

売掛金 + 棚卸資産 - 買掛金  = 経常運転資金

売掛金
売掛金とは売上債権、売掛債権とも言います。商品・サービスの提供が済んでいてまだ回収していない金額を指します。

棚卸資産
棚卸資産とは在庫のことです。在庫がたまるとキャッシュの流れが滞るため、早めに売却することが重要です。

買掛金
買掛金とは、仕入れや外注費などのうちまだ支払っていない代金を言います。
この経常運転資金にプラスで、増加運転資金・季節運転資金や納税予定などを考慮して資金繰りをする必要があります。

増加運転資金

売上が増加した場合に必要な運転資金を増加運転資金と言います。
例えば新規取引を受注すると、売上だけではなく仕入費も増大します。売上が増えるのは喜ばしいことですが、十分な増加運転資金を確保していない場合、帳簿上は黒字だったとしても倒産に追い込まれるリスクもあります(黒字倒産)。

季節運転資金

ある特定の時期に増加する運転資金です。例えば、クリスマスの時期に需要が高まる商品を売っている場合、通常の時期よりも商品が売れるため、仕入れのための費用も増加します。
需要が増加する時期が分かっている場合は、季節運転資金の蓄えをしておく必要があるでしょう。

その他の運転資金

この他、納税や株式の配当、役員報酬や社員への賞与なども運転資金として必要です。特に消費税や所得税の納税に関しては、納付の時期になって慌てないよう準備しておきましょう。

運転資金が不足する原因

審査に通らない原因

運転資金はどのような場合に不足するのでしょう。
まず考えられるのは売上減少などによる経営悪化です。売上が減れば、事業を運営するために必要な利益を確保できません。

そして、売上が増加した時にも運転資金が不足する可能性があります。
日本では掛取引が一般的で、

仕入れ→在庫→販売

の流れで事業を運営します(商品を作らずサービス提供のみの場合は、「在庫」は省いて考えてみてください)。
商品・サービスの代金回収が数ヶ月後であるにも関わらず、仕入れや外注費の支払いをしなければならない場合、帳簿上は黒字でも資金が不足します。
このように通常の事業運営だけで運転資金を確保できない場合、資金調達を考える必要があります。

運転資金の主な調達方法

銀行融資以外の資金調達

運転資金の調達方法は、主に6つあります。

  • 日本政策金融公庫から融資を受ける
  • 銀行から融資を受ける
  • 銀行カードローンを利用する
  • 消費者金融を利用する
  • ファクタリングを利用する
  • 助成金や給付金・補助金を利用する

それぞれの資金調達方法について分かりやすく説明します。

資金調達先 特徴 注意点
日本政策金融公庫 政府が100%出資する金融機関。民間の金融機関の補助的役割を果たす。小規模事業者から中小企業まで幅広く対応。創業融資、セーフティネットに関する融資、新規事業サポートなど融資制度も様々。資金使途は運転資金だけではなく設備資金にも対応している。
なぜ資金が必要なのか、どんなことに使うのかなどを説明し、返済能力があることを示す必要がある。
その分、金利は低めに設定されており、さらに借入後に滞納せず完済すると実績になり銀行融資にも通りやすくなる。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛金などの売掛債権を利用する資金調達方法です。
売掛金を発行している取引先の信用状況が良ければ、自社の信用情報が悪くても利用できる資金調達方法となります。
売掛金を発行している取引先の信用状況が良ければ、自社の信用情報が悪くても利用できる資金調達方法となります。
多くの企業は自社の売掛金がファクタリングに利用されることを嫌がります。最悪の場合、ファクタリングの利用がわかると、取引を打ち切れる可能性もあるため、注意して利用しましょう。
銀行の融資 銀行が提供する融資。
決算書などの提出資料をもとに銀行が企業を格付けし金利や融資金額を決定。
リーマンショック以降、中小企業への融資は厳しくなっており入念な準備が必要。
審査に必要な書類準備や審査期間も鑑みた上で申し込みをすることが重要。すぐに資金が必要な場合や切迫している場合は、そのほかの資金調達方法を検討する必要がある。
銀行のビジネスローン オンラインから申し込み可能で、プロパー融資と比較すると審査もやさしい点が特徴のビジネスローン。銀行と会計ソフトが提携したものもあり、その場合は普段の会計データをもとに最適な融資プランが提供される。
審査がやさしく申し込みから融資実行までの期間が短い分、金利は高め。返済が滞らないようきちんと資金繰りの計画を立てた上で申し込むことが重要。
その他のビジネスローン ビジネスローンには銀行以外にもカード会社や消費者金融が提供するものがあります。銀行のビジネスローンと同じく、申し込みから融資実行までの期間が短い点が特徴。最短即日融資も。
金利が高めに設定されている点には注意が必要。
補助金・助成金 日本の助成金や給付金は充実しています。特に新型コロナ関連の助成金、給付金はバリエーション豊富です。 自社が対象となる補助金・助成金を見つけるのが大変です。申請に時間や手間が大変なのと、審査基準が高いので注意が必要です。

日本政策金融公庫から融資を受ける

日本政策金融公庫は政府が100%出資をしている金融機関です。スタートアップ企業や小規模企業、中小企業まで利用できます。また、日本政策金融公庫は無担保での融資にも対応しており、金利も低いおすすめの資金調達方法です。

デメリットは提出書類が多く、審査に時間がかかる傾向にある点です。即日融資を受けられないため、計画的に利用しましょう。

銀行から融資を受ける

銀行から融資を受けることが、もっともポピュラーな資金調達方法でしょう。カードローンなどに比べて金利が低いため、日本政策金融公庫に次いで検討すべき資金調達方法です。

しかし、金利が低い分、 審査はほかの資金調達方法に比べて厳しいです。決算書の内容を重視する銀行が多く、赤字経営の場合、なかなか融資を受けることは難しいかもしれません。事業が軌道に乗り実績ができてきたら、利用してはいかがでしょうか。

また、複数の銀行と取引することがおすすめです。複数の銀行と取引することによってリスクヘッジできるためです。1つの銀行が融資を渋っても、他の銀行で借りられる可能性があるため、できるだけ複数行と取引してください。

銀行カードローンを利用する

カードローンは基本的に無担保で利用でき、審査も銀行融資に比べると柔軟性があります。また、審査スピードも速く、お金がすぐに必要な場合に、重宝する資金調達方法です。

カードローンはATMやインターネットバンクで簡単に借り入れができ、資金使途も自由です。借り入れ上限額までであれば、借り入れや返済は自由に利用できます。使いやすさがカードローン最大の特徴です。

また、利用可能額も銀行融資などに比べると小さいですが、 信用力が高ければ500万円などある程度の金額で借り入れできます。

一方のデメリットは、金利の高さです。金利が日本政策金融公庫や銀行融資などに比べて高く、計画的に利用しないと利息の返済分が大きな負担となります。 カードローンは使い勝手は良いものの、計画的に利用しましょう。

消費者金融を利用する

消費者金融は、最短即日で資金調達ができる可能性があります。審査も銀行融資などに比べて柔軟性が高いです。

また、銀行カードローンと同様、借り入れ上限金額までであれば、いつでも出し入れが可能です。信用力が高ければ大きな金額の融資を受けることも可能となります。使いやすさが消費者金融の特徴です。

しかし、消費者金融にもデメリットがあります。金利の高さです。銀行融資より高いことはもちろん、銀行カードローンよりも金利の高いことが一般的です。銀行カードローン以上に計画的に利用しないと、返済に窮してしまう可能性があります。

ファクタリングを利用する

ファクタリングとは、売掛金などの売掛債権を利用する資金調達方法です。
売掛金を発行している取引先の信用状況が良ければ、自社の信用情報が悪くても利用できる資金調達方法となります。

銀行融資やカードローンなどの一般的な資金調達方法の場合、自社の信用状況が悪いと利用できません。その点、自社の信用状況が悪くても利用できる、ファクタリングの利用価値は大きいのではないでしょうか?

ファクタリングには、取引先にファクタリングの利用がわからない「2社間ファクタリング」と、取引先にファクタリングの利用がわかる「3社間ファクタリング」があります。

2社間ファクタリングはファクタリングの利用が取引先伝わらずに済みますが、その分、手数料が高いです。一方、3社間ファクタリングは取引先にファクタリングの利用がわかってしまいますが、手数料が安いです。(参考:ファクタリング手数料相場ってどのくらい?手数料からかかる費用について徹底解説

ただ、多くの企業は自社の売掛金がファクタリングに利用されることを嫌がります。最悪の場合、ファクタリングの利用がわかると、取引を打ち切れる可能性もあるため、注意して利用しましょう。

助成金や給付金・補助金を利用する

日本の助成金や給付金は充実しています。特に新型コロナ関連の助成金、給付金はバリエーション豊富です。利用できる場合は、ぜひ積極的に活用するようにしてください。

合わせて読む!:返済不要の資金調達方法とは?5つの方法!特徴やメリット・デメリットをチェック!

必要な運転資金の計算方法と目安

計算方法

必要な運転資金額を計算することは、資金繰りを安定させるためにも重要です。黒字倒産とならないためにも、計算式と必要運転資金の目安を知っておきましょう。

必要な運転資金を求める計算式

運転資金 計算方法は以下の計算式によって算出します。

運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

決算書の中の貸借対照表の売上債権(売掛金)、商品在庫などの棚卸資産、そして仕入債務(買掛金・未払金)のそれぞれの残高をチェックして計算式にあてはめてみましょう。たとえば、売上債権が300万円、棚卸資産が400万円、仕入債務が200万円の会社の場合の運転資金は次のようになります。

運転資金=300万円+400万円-200万円=500万円

売上債権と棚卸資産にはその裏側に仕入資金があり、資金が出ていったままの状態になっている金額です。仕入債務は将来発生する資金ですが、今の時点では支払いがない金額です。これを差し引きすることで、商品を販売し入金されるまでのつなぎに必要な資金、つまり運転資金が算出されます。

必要な運転資金の目安

必要な運転資金の目安は業界や業種、事業の形態などによって異なります。飲食業の場合には、仕入れから資金回収までの回転期間は短いために、手元のキャッシュは比較的小さな金額で済みます。

一方で、不動産開発業などは投下資金の回収まで1年近くかかる場合があり、多額の運転資金が必要となります。必要な運転資金は、売掛金の回収が遅延したり、不良債権になってしまったりするなどのトラブルがあったときにも事業を継続していけるかどうかという視点で考えることが重要です。

1カ月分の運転資金だけでは資金不足に陥る可能性があるため、一般的には3~6カ月分が運転資金として必要な額の目安とされています。

必要な運転資金が確保されているか常にチェックしよう

運転資金は、事業を継続していくために必ず用意しなければならない資金です。創業間もないころや事業を拡大していくときには、経営者は時間のほとんどを仕入れや営業に費やされ、資金繰りまでおぼつかないこともあるでしょう。金融機関の担当者や税理士などの専門家に財務的な相談をしながら、必要な運転資金が確保されているかを常に気に留めておき、安定的な経営を目指していきましょう。

引用元:https://financenavi.jp/basic-knowledge/driving-wage/

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