クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指しています。
資金調達といえば、一般的に金融機関からの借入や関係者・ベンチャーキャピタルによる出資などがあげられます。
クラウドファンディングは、そういった資金調達にはない「手軽さ」や「拡散性の高さ」、「テストマーケティングにも使える有用性」といった点が魅力的な新たな資金調達の仕組みとして近年注目されています。
中でも、「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題をこう解決したい」といったアイデアや想いを持つ人は誰でも“起案者”として発信でき、それに共感し「応援したい」「モノやサービスを試してみたい」と思った人は誰でも“支援者”として支援できる、双方にとっての手軽さがクラウドファンディング最大の特徴といえます。
2018年度のクラウドファンディングによる流通金額は、日本国内で約2,000億円、全世界では7兆円に達すると見込まれている。
クラウドファンディングの歴史は?
現代のクラウドファンディングのような手法がは、1997年にインターネットを通じてロックバンドMarillionのファンが行ったキャンペーンだと考えられている。このキャンペーンでは、ファンたちが自主的にコミュニティサイトを開設し、ツアー費用60,000 ドルを集めてバンドに提供した。2000年には、この事例にならってアーティストのアルバム制作を支援するArtistShare社が登場するなどし、ウェブを通じた資金調達事業が徐々に拡大していった。
クラウドファンディングという言葉が初めて登場したのは、2006年のことである。ウェブサイトfundavlogの説明において、起業家のマイケル・サリバン氏がクラウドファンディングという言葉を使ったことがきっかけでその名称が定着するようになったと言われている。
2008年の米国大統領選では、当時候補であったオバマ氏がインターネットを通じて選挙資金の調達に成功。集まった75 億ドルの資金のうち、90%は100ドル以下の小口寄付だったことが明らかとなり、クラウドファンディングの可能性に一層の注目が集まるきっかけとなった。
現在までに、続々とクラウドファンディングプラットフォームが登場してきている。有名なプラットフォームにアメリカのKickstarterやIndiegogoなど。日本でのサービスインは2011年。東日本大震災をきっかけに立ち上がったCAMPFIREやReadyforといったクラウドファンディングプラットフォームは、現在さまざまな分野のプロジェクトを支援している。
クラウドファンディングのメリット
オンラインで簡単に誰でも資金調達ができる
クラウドファンディングの最大のメリットとして、インターネット上で資金調達を誰でも行うことができることがまず挙げられます。
起案者がしっかりとしたプロジェクトの目標と計画、そして支援者へのリターンを用意することができれば、資金調達を行うことができます。
従来の資金調達の方法だと、融資を受けるために事業計画書をしっかりと作り込み、審査に通らなければ金融機関から資金を得ることができませんでしたが、
クラウドファンディングでは、支援者へ起案者のプロジェクトに対する「熱意」を感じさせ、プロジェクトに賛同してもらうことができれば資金調達を誰でも行うことができます!
夢や実現させたいプロジェクトがある起案者にとっては、とても魅力的な資金調達の方法となっているので、2022年でもクラウドファンディングを資金調達の方法として選ぶ人が多くなってきています。
アイデアを検証できる
商品開発やテストマーケティングのためのユーザーの年齢層や性別などのデータを取ることができます。
発売予定の商品やターゲット市場について理解すればするほど、財務リスクを減らすことができ、マーケット調査を実施するための優れたツールとなります。
クラウドファンディングで商品を前売りすることで、「どのような人たちが商品を購入してくれるだろうか」という質問に明確な答えが与えられ、アイデアを検証するのに役立ちます。のちの販売方法を示さないまま商品を製造すると、アイデアに対する需要がそれほど多くなかった場合に、多大な時間と費用を浪費してしまうことにもなります。
また、販売している商品を欲しいという人々がいることを知っていれば、自信を持って計画を実施し、拡大することができます。
ファンを獲得しやすい
ECサイトからの購入よりも、わざわざクラウドファンディングのサイトをブラウジングするユーザーは「まだ市場に出ていない珍しい新商品に興味がある」人たちが多いです。
そして、それらの商品の珍しさに対する好奇心に加えて、「商品が開発された背景」を重要視するユーザーが多いため、商品を気に入ってもらえることができれば、次の新商品に期待してもらえるため、長期的に応援をしてもらえます。
クラウドファンディングのデメリット
第三者にアイデアを取られる可能性がある
目新しい商品をクラウドファンディングで公開するということは、他の企業や第3者にあなたのアイディアを知られるということです。
もし、知らない誰かがあなたのアイデアをタイミング良く知ってしまい、ライバルがあなたより先に商品化してしまった場合、本当はあなたのアイデアからできた商品にも関わらず「偽物のコピー商品」が出回ってしまうかもしれません。
こうなっては誰のアイデアが「オリジナル」なのかが、世間は分からなくなってしまい、オリジナルのクリエイターが批判を受ける可能性も出てきます。
実際にあった例として、海外のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で大成功した商品である「Fidget Cube(フィジェットキューブ)」が有名な例です。
7億円以上の支援金ををクラウドファンディングで集めたこの画期的な商品を、「Jack」と呼ばれる匿名の起業家が、フィジットキューブのデザインをすでにコピーしていたメーカーを中国で見つけ、「Stress Cube」という商品名でオリジナルより先に市場に出したのです。
悔しいことに、コピーした起業家のチームはわずか2ヶ月で345,000ドルを稼ぎ、その後、Amazonのプラットフォームではもともとオリジナル製品である「フィジェットキューブ」よりも、コピー製品である「Stress Cube」の方が多く出品されていたのです。
クラウドファンディングの種類とは?
クラウドファンディングは、リターンの有無やその内容によって、大きく「寄付型」「購入型」「融資型」「株式投資型」「ファンド型」「ふるさと納税型」の6つに分類される。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、起案されたプロジェクトに対して支援者がお金を支援し、支援者はそのリターンとしてモノやサービスを得る仕組みのクラウドファンディングです。
購入型という名の通り、支援者は起案者がリターンとして設定した商品やグッズ、サービス等を購入するような感覚で支援することができます。金銭的な見返りがリターンとなることはありません。
また、購入型クラウドファンディングには「All-or-Nothing型」「All-In型」といった2種類のやり方があり、起案者はどちらで資金調達をおこなうか選ぶことができます。
「All-or-Nothing型」は、募集期間内に目標金額を達成した場合のみプロジェクトが成立します。
目標金額が集まってはじめて実行可能となるプロジェクトの場合は、こちらを選択することをおすすめします。
「All-In型」は、目標金額に達していなくても、一人でも支援者が出ればプロジェクトの成立が認められます。
ただし、掲載時にプロジェクトの実施を確約する必要があるため、内容によって利用できない場合があります。
購入型クラウドファンディングの代表的なサービスには『CAMPFIRE』、『READYFOR』、『Makuake』、朝日新聞社が運営する『A-port』などがあります。
中でも『CAMPFIRE』は国内最大のクラウドファンディングで、2011年のサービス開始から現在までに70,000件以上のプロジェクトを掲載し、支援者数は延べ870万人以上、流通金額は660億円に達しています(2022年11月時点)。
寄付型クラウドファンディング
リアルな場でおこなう寄付と同様で、商品やサービスなどのリターンは基本的に発生しません。プロジェクトによっては、お礼として手紙や写真を受け取ることができます。
被災地の支援など社会貢献性の強いプロジェクトが多いことが特徴です。
代表的なサービスには、CAMPFIREが運営している『GoodMorning(一部プロジェクト)』や『READYFOR』などがあります。
融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングとは、事業者が仲介し資産運用したい個人投資家から小口の資金を集め、大口化して借り手企業に融資する仕組みのクラウドファンディングです。
日本では、「融資型クラウドファンディング」よりも「ソーシャルレンディング」として認知されていることが多いです。
融資型クラウドファンディングは、個人から集めた資金を「融資」するという性質を持っているため、購入型や寄付型とは異なり支援者は金銭的なリターン(利息)を得ることができます。
金融商品の一つとなるため、事業者は「貸金業法」や「金融商品取引法」などによる法律規制を受けます。
代表的なサービスには、『SBIソーシャルレンディング』、『funds』などがあります。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、個人の起案者ではなく株式会社が行う資金調達の一つで、個人投資家へ非公開株を提供する代わりに資金を募る仕組みのクラウドファンディングです。
投資家は出資先企業の詳細な情報を参考に投資を行い、非上場企業の未公開株を取得できることが特徴です。
2015年より、株式投資を扱う第一種金融商品取扱業に少額の特例ができたことで、日本にも2017年頃からサービスが出てきています。
ただし、借り手企業側は年間1億円未満、投資家は1社につき50万円までと投資金額に制限があります。
株式投資型クラウドファンディング事業者には、第一種少額電子募集取扱業の資格が必要です。
代表的なサービスには、『CAMPFIRE Angels』、『FUNDINNO』、『Unicorn』などがあります。
ファンド型クラウドファンディング
ファンド型クラウドファンディングは、株式型と同じく企業がおこなう資金調達の一つで、特定の事業に対して個人投資家から出資を募る仕組みのクラウドファンディングです。
投資家は、売上等の成果や出資額に応じた金銭的なリターンを受け取ることができます。
金銭的なリターンと合わせて、その事業で作られたモノやサービス、その割引券等が受け取れることもあり、金融商品としてだけでなく社会貢献性の要素が強いことが特徴です。
また、比較的似た特徴をもつ融資型では元本+利息という形で利回りが計算されていましたが、ファンド型では売上に基づく分配金で利回りが計算されます。
投資する事業の売上に応じて、利回りが変動するのが特徴です。
ファンド型クラウドファンディングでは、事業者は、第二種金融商品取引業の登録が必要になり、投資する人は匿名組合契約などの出資契約を事業者を通して行うことになります。
日本においてファンド型のサービスはまだ少なく、代表的なものとしては『セキュリテ』があり、国内外のビジネスへ投資することができます。
ふるさと納税型クラウドファンディング
ふるさと納税型クラウドファンディングとは、自治体が解決したい課題を具体的にプロジェクト化し、そのプロジェクトに共感した人からふるさと納税によって寄付を募る仕組みのクラウドファンディングです。
プロジェクトを選び、リターンを選ぶという流れは、購入型や寄附型のクラウドファンディングと同様ですが、ふるさと納税の仕組みを使うことで、寄付金の控除を受けられるのが特徴になります。
また、ふるさと納税にクラウドファンディングを活用するため、それぞれのサービス提供事業者の特性が現れます。
たとえば、CAMPFIREが提供している『CAMPFIREふるさと納税』は、「好きな地域を応援する」という想いを実現するサービスです。「小さな火を灯しつづける」というCAMPFIREなりのやり方で、ふるさと納税の制度を活用して、自治体と共に新しい資金の流れを作っています。
他にも、ふるさと納税サイトの『ふるさとチョイス』や『さとふる』、クラウドファンディングサイトの『READYFOR』などがそれぞれの特性を活かしたサービスを提供しています。
個人でのクラウドファンディングのやり方【手順】
基本的なクラウドファンディングの流れは、先に紹介した分類に限らず共通しています。
ここでは、起案者と支援者それぞれの流れを簡単に説明します。
起案者の場合
- 1. 掲載したいクラウドファンディングサイトを検討
- 2. クラウドファンディングのプロジェクトページを作成
- 3. プロジェクトページ完成後、公開して資金調達をスタート
- 4. 募集期間中はさまざまなプロモーション活動を行い、プロジェクトページを拡散
- 5. 集まったお金で、プロジェクトを実行
支援者の場合
- 1. クラウドファンディングサイトでさまざまなプロジェクトを閲覧
- 2. プロジェクトページの内容やリターンの詳細を確認
- 3. 募集期間内にクラウドファンディングサイト上で支援(決済)
- 4. 募集期間終了後、活動報告などでプロジェクトの進捗を随時確認
- 5. リターンが予定通り届くかどうかを確認
クラウドファンディングの事例とは?
日本のクラウドファンディングの成功事例として身近なものの一つに、2016年公開の映画「この世界の片隅に」が挙げられるだろう。同作は製作費に必要な約3,900万円をクラウドファンディングで調達することに成功しており、最終的には世界60か国以上で上映されることとなった。
また、民間団体と地方自治体による共同プロジェクトの資金をクラウドファンディングで調達する事例も存在する。
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが渋谷区と提携して展開する「スタディクーポンイニシアティブ」プロジェクトは、経済的な理由から学習塾に通えない児童を対象に、複数の学習塾の学費に使えるクーポンを提供する取り組みだ。寄付型クラウドファンディングでプロジェクト費用を募り、1,400万円以上を調達することに成功した。
楽してお金を集める方法ではない
過去には、立案者の見通しの甘さや計画性のなさによってプロジェクトが頓挫し、お金を払ったにもかかわらず支援者がリターンを受け取ることができなかったケースがある。「出資者や社会に対するメリットが一切なく、自分の願望を叶えることだけを優先したようなプロジェクト」も存在し、「クラウドファンディングは詐欺」「乞食と一緒だ」というような批判を受けた事例もある。
支援者がお金を出資してくれるのは、そこに何かしらの「想い」や「期待」があるから。クラウドファンディングは決して、楽してお金を集めるシステムではないのだ。安易に始めるのではなく「本当にクラウドファンディングを使うべきプロジェクトなのか」「目標金額の設定や戦略は適切か」などをしっかりと考慮してから実行する必要があることを忘れてはならない。
クラウドファンディングをするならどこ?おすすめサイト5選!
CAMPFIRE
「一人でも多く一円でも多く、思いとお金がめぐる世界をつくる」をミッションとして2011年に創業し、これまでに6.5万件以上のプロジェクト立ち上げ実績、7そして750万人以上の支援者から590億円以上の支援金が集まっている日本最大のクラウドファンディングサイトです。
目的別にクラウドファンディングを始めることができ、初心者にとってもとても分かりやすいウェブページです。運営側の払う手数料や決済手数料は目的によって違うのでチェックしてみることをおすすめします。
BOOSTER
https://camp-fire.jp/booster-parco
BOOSTERは上記で紹介した日本最大のクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」とファッションビル「PARCO」が共同運営しており、購入型クラウドファンディングのプラットフォームです。
1プロジェクト1担当制であるため、初心者にとっても安心なサポートを受けることができます。また、「プレスリリース配信代行オプション」や「プロジェクトページ代行オプション」はユニークなサポートで、出店費用はかかりますが渋谷PARCO BOOSTER STUDIOに商品を展示することも可能です。
Makuake
2013年にサービスをスタートしたMakuakeは、「世界をつなぎ、アタラシイを創る」をミッションに、「アタラシイ」を感じさせる「商品」や「挑戦」のプロジェクトを掲載しているクラウドファンディングサイトです。
Makuakeのサイトが掲載している基本条件3つを満たしていると掲載が許可されます。
- プロジェクトの要素に「アタラシイ」があること
- 実行者にとって「挑戦」や「ストーリー」があること
- 基本条件をクリアしていること
Makuakeは大手IT企業の子会社が運営しており、そのネットワークを使った集客力が強みです。
これまでにないユニークで、珍しい商品をクラウドファンディングに出したいと考えている人にとっておすすめなクラウドファンディングのサイトですね。
READYFOR
2011年3月に日本国内で初めてクラウドファンディングサイトを開始しているREADYFORは、「想いの乗ったお金の流れを増やす」をミッションとして、これまでに累計支援金額およそ190億円以上のプロジェクトの成功をサポートしてきています。
READFORの大きな特徴として、寄付型のクラウドファンディングを掲載することができます。
「動物保護」「国際協力」「福祉」「災害」などの分野で社会貢献につながるプロジェクトを数多くのNPO法人や自治体が活用しているので、社会問題解決などに関わるプロジェクトを始めたい人にとっておすすめなクラウドファンディングのサイトです。
また、「ガバメント クラウドファンディング READYFORふるさと納税」という仕組みがあるのもユニークな要素です。
FUNDINNO(ファンディーノ)
FUNDINNO(ファンディーノ)は日本国内初の株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームとして有名で、2022年5月2日時点で、登録ユーザーが10万人を超え、累計成約プロジェクト数は 250 件、そして累計成約額も 80 億円を超えました。
募集形式は「All-or-Nothing方式」のみを採用しており、目標金額が達した場合にのみプロジェクトが実施されます。
FUNDINNO(ファンディーノ)のサイトでは、最短3ヶ月で資金調達が可能で、専門担当者が募集ページの作成から、資金調達後の株主の管理などのサポートもしてくれます。
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