ファクタリングで請求書を偽造するのNG
ファクタリングとは売掛債権を売却することにより、早期に資金調達可能になるサービスですが、売掛債権=請求書が存在します。
その請求書の内容が売掛債権の内容を決めるわけですから、より多く資金調達したいと考えた場合、請求書の金額を多く偽造してファクタリングすれば本来より多く資金調達可能になります。
または、全く存在しない債権をでっち上げて請求書を発行することによって架空債権を作ることができ、本来あるはずない資金を調達することも可能になってしまいます。
ファクタリング会社もその辺りは審査においてかなり慎重に見ていますが、中にはそのままファクタリング契約がされてしまうケースも存在します。
しかしこれはファクタリング会社を騙す行為となり=詐欺罪がなりたちます。
絶対に請求書偽造や架空債権を作ることは犯罪となるのでやめましょう。
今回はこのような事例がどのような罰則規定や犯罪行為になるのか解説して行きます。
ファクタリングで請求書を偽造するとどうなる?
ファクタリングで請求書を偽造しても「偽造罪」にはなりません。
偽造罪は他人名義の書類を偽造した場合に成立する罪であり、ファクタリングの請求書のように、自社名義では犯罪不成立となるのです。
しかし、架空債権を確定債権だと思い込ませるために偽りの請求書を作成し、ファクタリング業者から金銭を騙し取ろうとする行為には「詐欺罪」が成立します。
詐欺罪に罰金刑は降りませんが、10年以下の懲役刑が課されるので、ファクタリングでは絶対に請求書を偽造しないように注意してください(刑法第246条)。
請求書の偽造により、利用者はファクタリング会社から本来よりも多く買取代金を払ってもらうことができる場合もあれば、そもそも受け取ることができなかったお金を手にすることができます。
しかし後で入金予定のない売掛金を先に現金化することになれば、売掛金回収後にファクタリング会社に渡すことができず、窮地に追い込まれることになるでしょう。
請求書の偽造の方法として、次に2つが挙げられます。
- 架空の請求
- 金額の水増し
それぞれ説明していきます。
架空の請求
ファクタリングで犯罪になる行為として、存在しない請求書を作成し、架空の債権を発生させファクタリング会社に買い取らせることが挙げられます。
請求書だけでなく、契約書や入出金履歴のわかる口座の写しなども偽造すれば、ファクタリング会社も架空債権であることを見抜くことは困難になってしまいます。
特に悪質な場合には、売掛先と共謀して請求書などを偽造し、現金化した代金を利用者と売掛先で分けるといったケースも見られます。
ファクタリング会社を欺く行為であるため、詐欺罪の対象となり罪に問われる可能性も十分にあると留意しておいてください。
金額の水増し
ファクタリングで犯罪になる行為として、請求書の金額を水増しした状態でファクタリング会社に買い取らせることが挙げられます。
請求書の金額を多く水増しすると、その分、ファクタリング会社が買い取る金額も増えるため、多く買取代金を受け取ることができます。
この通常より多くの売掛金が発生しているように見せかける金額の水増しで買取代金を受け取っても、売掛先から回収できる売掛金が増えるわけではないため、回収代金をファクタリング会社に支払うことが困難になります。
金額を水増しした請求書を作成し、多く買取代金を受け取ることはファクタリング会社を騙すことになるため、詐欺罪で訴えられても文句はいえないといえます。
なお、請求書を発行した時点と、返品や値引きなどで後日請求する金額が異なる場合もあるでしょう。
しかしファクタリング会社が事情を知らなければ入金額と異なることになるため、後々トラブルにつながりかねません。
請求書に記載された金額が後日減額される可能性があるときには、前もってファクタリング会社にその事情を伝えておいたほうがよいでしょう。
ファクタリングで請求書偽造以外の犯罪になる行為
ファクタリングで売掛金をファクタリング会社に譲渡する上で、存在しないはずの売掛金を現金化しようとする行為や、少しでも多く資金を調達しようと金額を上乗せする行為は犯罪です。
単に現金化しようとしたり上乗せしたりするだけであれば罪に問われることはないでしょう。
しかし架空の請求書や金額を上乗せした請求書をファクタリング会社に買い取らせようとすると、嘘の書面で騙すことになるため詐欺罪の対象となる可能性があります。
また、2社間ファクタリングでは利用者がファクタリング会社に代わって売掛金を回収することになりますが、回収分を使い込むと横領罪として罪に問われます。
ファクタリングは銀行融資が利用しにくい中小企業にとって使いやすい資金調達の方法である反面、犯罪行為でファクタリング会社を騙そうとする事例も後を絶たないのが現状です。
実際、ファクタリングを利用する上で、次のような犯罪に該当する行為を行う利用者が存在します。
- 債権の二重譲渡
- 決算書の粉飾
- 売掛金の流用
それぞれどのような行為なのか説明していきます。
債権の二重譲渡
ファクタリングで犯罪になる行為として、すでに他社に売却した売掛金を他のファクタリング会社にも売る債権の二重譲渡が挙げられます。
1つの売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する行為は、詐欺罪で処罰されます。
不動産など目に見える資産であれば、誰が所有者か確認できるように登記手続が行われるため、所有権を主張できます。
しかし売掛債権は目に見えない資産であるため、二重に譲渡されてもその事実をファクタリング会社が知ることは難しくなります。
すでに別のファクタリング会社に譲渡された売掛債権であるのにも関わらず、何も知らない新たなファクタリング会社が買い取ってしまう可能性は十分にあるといえるでしょう。
売掛債権も債権譲渡登記を使って、誰がその権利を所有しているのか証明することはできます。
そのため売掛先を交えずに取引する2社間ファクタリングでは、債権譲渡登記を必須とするファクタリング会社も少なくありません。
ただ、債権譲渡登記をすると、その情報を誰でも閲覧できるようになり、売掛先や取引のある銀行などがファクタリングの事実を知るリスクがゼロでなくなります。
登記にかかる費用も実質、利用者が負担することになるため、コストも高くなり十分な資金調達につながりにくくなるでしょう。
仮にファクタリングで売掛債権をファクタリング会社に譲渡したことを知られれば、売掛先が資金繰りの悪化した企業であることを懸念することとなり、その後の関係性や取引に影響が及ばないとも限りません。
また、債権譲渡登記が可能であるのは法人のみのため、個人事業主は登記手続ができずファクタリングで資金調達すること自体できなくなります。
そのためファクタリングで資金調達するときには、諸事情を考慮した上で債権譲渡登記を必須とせず、留保や未登記などで対応できるファクタリング会社を選んだほうが安心です。
参考:ファクタリングの二重譲渡は犯罪!場合によっては詐欺で逮捕?バレる理由は?対処法7選
決算書の粉飾
ファクタリングで犯罪になる行為として、粉飾した決算書をファクタリング会社に提出し、買い取らせることが挙げられます。
ファクタリングの審査では、売掛先の信用力が重視されるため、利用者が赤字決算でも利用できないわけではありません。
ただ、2社間ファクタリングでは利用者がファクタリング会社に代わって売掛金を回収するため、極度に財務状況が悪化していたり資金繰りが厳しかったりといった状態では、審査に通りにくくなってしまいます。
もしも審査に通った場合でも、そのリスクを手数料に反映させるしかなくなるため、高めの手数料をファクタリング会社に支払うことになりかねかません。
そのため決算書の見た目を気にして、粉飾した決算書を提出する行為もゼロではないといえます。
しかし粉飾した決算書を提出し、ファクタリング会社を騙す行為は詐欺罪となる可能性があるため、行わないようにしてください。
売掛金の流用
ファクタリングで犯罪になる行為として、回収した売掛金の使い込みや流用が挙げられます。
2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社に代わって利用者が売掛金を回収します。
しかし売掛金を回収したとき、利用者の資金繰りも良好でなければ、すでにファクタリング会社に所有が移っている代金とわかっていても使い込んだり流用したりといったことが起きてしまいます。
回収した売掛金を別の支払いに流用してしまうと、当然、約束の期日にファクタリング会社に渡すことはできなくなります。
その結果、金利の高いビジネスローンや違法なヤミ金融業者でお金を借り、ファクタリング会社に支払う売掛金に充てることになれば、資金繰りはますます悪化することとなり事業継続も難しくなってしまうでしょう。
ファクタリングで売掛債権を売って買取代金を受け取った段階で、後日売掛先から入金される売掛金はファクタリング会社のものであることを理解しておくことが必要です。
譲渡された売掛金を使い込んでしまう行為は横領罪に該当することとなるため、ファクタリング会社から訴えられる可能性もあることを認識しておき、絶対に他の支払いに流用したり使い込んだりしないようにしてください。
ファクタリング会社に支払いができない場合の対処法
①資産の売却
在庫商品について買取業者に一括買取をお願いしたり、動産、不動産などで売却しても会社が倒産する恐れのないものは思い切って売却し、現金を作ります。
この際、「もったいない」「あればいずれ活用できる」などの言い訳をしている暇はありません。
会社の命を守るために、倒産の危機に影響しない資産はすべて売却します。
②売掛金の早期回収
他の取引先と交渉して、本来の額よりも幾分値下げを提案したうえで、早めに入金してもらうことができないか交渉してみます。
資金繰りの問題を抱えていることがばれてしまいますから、信用面が低下してしまう恐れがあるものの、緊急事態ですから躊躇していられません。
③出費の削減
現金を作り出すのと並行して、出費の削減も同時に行います。
不要なサービスはすべて解約し、少しでも出費を減らすようにします。
④銀行融資のリスケ
また銀行から融資を受けている場合は、銀行融資の返済の猶予を申し込み、リスケをすることにより、資金の流出を止めることも必要です。
⑤取引先・下請先・仕入先への支払いを待ってもらう
また、取引先・下請先・仕入先への支払いが迫っている場合には、取引先・下請先・仕入先への支払いも待ってもらい資金の流出を止めましょう。すでに、取引先・下請先・仕入先への支払を何度も待ってもらっているかもしれませんが、債権譲渡通知を重要取引先に送付され、取引停止になってしまうかどうかの瀬戸際でもありますから、取引先・下請先・仕入先への支払を待ってもらうほかありません。
⑥ファクタリング業者の乗り換え
現実には難しいことが多いですが、手数料の安いファクタリング業者に乗り換えて、債務を一本化することで負担を少しでも減らすことができれば有利になります。
参考:ファクタリングは乗り換えがお得?乗り換えに最適なファクタリング会社10選!
⑦ファクタリング案件に強い弁護士への相談
まっとうなファクタリング業者を利用しているのであれば、支払い問題は自助努力での対処が基本となるでしょう。
しかし相手が悪徳業者となると、専門家の力を借りなければ厳しいケースが多くなるでしょう。
特に以下のようなケースでは、弁護士や公的機関等に相談したほうがベターです。
- 弁護士や公的機関に相談した方が良いケース
-
- ファクタリング手数料設定がヤミ金まがいの暴利相当の契約のとき
- ファクタリング業者から行き過ぎた取り立て行為(脅迫、執拗な電話など)を受けている
- ファクタリング業者が債権回収のリスクを負っていない契約になっている
貸金のようにファクタリングに関する法整備はなかなか進んでいません。
しかしながら少しずつ悪質業者の実態が明るみに出て、逮捕に至る事案も出てきています。
弁護士に依頼すれば100%解決というような簡単なものではありません。
ただし弁護士の依頼によって以下のような効用が期待できるケースがあります。
- ファクタリング 弁護士相談することのメリット
-
- 悪質な取り立て行為(恫喝、家族や従業員への嫌がらせ等)の抑制
- 債権譲渡通知を売掛先へ発送させない交渉
- 手数料の減額、過払い金返還などを含むファクタギング業者との和解交渉
ファクタリング業者に悪質性が疑われる場合は一人で抱え込まずに、信頼できる弁護士等に相談することが大切です。
弁護士に相談するべき悪徳ファクタリング業者の特徴
弁護士に相談するのは、なかなか心理的ハードルが高いものです。
こちらでは簡単に弁護士に相談するべき悪質業者の特徴をまとめました。
実際に弁護士に相談するかの判断基準の目安として参考にしてみて下さい。
- ファクタリング手数料が年率換算でヤミ金に匹敵するような暴利レベルである
- 売掛金の回収責任をファクタリング業者が一切負わない、実質的な貸金契約である
- 契約書がない、もしくは契約以外の手数料を不当に要求してくる
- 深夜早朝を問わず電話を掛けてくるなど過剰な営業や取り立て行為がある
なお過去に悪質ファクタリング業者で摘発された案件は「実質的な貸金で法定金利を大幅に超過している」という特徴が共通しています。
売掛債権の買取ではなく実質的に貸金と思われる案件では弁護士などに相談しやすい環境が少しずつ整いつつあると言えそうです。
参考:ファクタリング利用にはトラブルに気をつけて!金融トラブルに強い弁護士4社も紹介!
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