送金追跡とは?仕組み・必要性・トラブル防止のポイントを徹底解説

送金追跡の基礎と実務対応:銀行・為替・ファクタリングで役立つ完全ガイド

「振込したのに相手に届かない」「国際送金が止まっている理由がわからない」――金融実務では、こうした不安や焦りに直面する場面が少なくありません。この記事では、銀行・為替・ファクタリング現場で日常的に使われるワード「送金追跡」について、初心者にもわかりやすく、仕組みから具体的な対応手順、現場での言い回しまで丁寧に解説します。読めば、何を・誰に・どの順序で確認すれば良いかがはっきりし、無駄な待ち時間やトラブルを減らせるはずです。

業界ワード(送金追跡)

読み仮名 そうきんついせき
英語表記 Remittance Tracking / Payment Tracking(Trace)、SWIFT gpi Tracking

定義

送金追跡とは、振込・国際送金などの資金移動が「依頼」から「受取人の着金」までどの段階にあるかを特定し、遅延・未達・差戻し(リターン)の原因を調べる実務全般を指します。銀行の取引IDやSWIFTのUETR(Unique End-to-end Transaction Reference)、MT103などの決済電文情報を手がかりに、関係金融機関へ照会(トレース)を行い、所在とステータスを明らかにします。

送金追跡の基本(仕組みと流れ)

国内送金(振込)の場合

国内の銀行間振込は、主に全国銀行資金決済ネットワーク(いわゆる全銀システム)などの決済ネットワークを経由します。通常は数分~当日中に着金しますが、名義不一致、口座閉鎖、受取銀行側のシステム保留、カットオフ後の受付などで遅延・未達になることがあります。送金追跡では、振込受付番号(取引番号)や振込依頼控え、振込日時、送金金額、依頼人・受取人情報をもとに、まずは送金元の銀行へ照会し、電文の発信有無、受取銀行到達の事実、保留理由、組戻し可否などを確認します。

国際送金(外国為替)の場合

国際送金はSWIFTネットワークを介して、送金銀行—中継銀行(コルレス)—受取銀行という経路で資金と情報が伝達されます。SWIFT gpi(global payments innovation)対応送金では、36文字のUETRによりリアルタイムでトラッキングが可能になっており、どの銀行で保留になっているか、手数料控除、タイムスタンプなどが追えます。非gpiでもMT103(顧客送金の電文)コピーの提示で追跡を進められます。遅延の主因は、制裁・マネロン対策のコンプライアンス審査(スクリーニング)保留、受取人情報の不備、中継銀行での手数料控除や経路変更、受取口座の制限などです。基本動線は「送金銀行へ照会→必要に応じて中継銀行・受取銀行へ連絡(銀行経由)」となり、当事者が直接中継銀行へ連絡できないケースが一般的です。

現場での使い方

言い回し・別称

送金追跡は、現場では以下のようにも表現されます。意味やニュアンスは近いものの、文脈で使い分けます。

  • 送金照会・振込照会(国内、一般的な表現)
  • トレース依頼/Trace(特に国際送金)
  • gpiトラッキング/UETRで追跡(SWIFT gpi対応)
  • MT103の提示/コピー依頼(国際送金の電文エビデンス)
  • 着金確認・未達調査・為替調査(総称的表現)

使用例(3つ)

  • 「昨日の海外送金が先方に未着とのことです。UETRはありますか? gpiで現状をトレースしてください。」
  • 「振込先名義の表記ゆれが疑われます。受取銀行で保留の可能性があるので、送金照会と組戻し可否の確認をお願いします。」
  • 「ファクタリングの買取代金を本日送金しました。クライアントへの着金報告が必要なので、取引IDとステータス更新を随時共有してください。」

使う場面・工程

  • 送金後に受取人から「まだ入っていない」と連絡が来たとき
  • 支払期日ギリギリで着金確認が必要なとき(与信・延滞管理)
  • 名義不一致・金額相違・口座誤りが疑われるとき
  • 国際送金でコンプライアンス保留・中継銀行での滞留が発生したとき
  • ファクタリングで買取実行資金の着金報告や、債務者入金の所在確認が必要なとき

関連語

  • UETR(ユニークID):SWIFT gpiの追跡用参照番号。36文字のUUID形式。
  • MT103:顧客送金のSWIFT電文。受取人・金額・手数料区分等のエビデンス。
  • OUR/SHA/BEN:国際送金の手数料負担区分(OUR=送金人負担、SHA=折半、BEN=受取人負担)。
  • 組戻し(取消):誤送金時などに資金を戻す手続。相手方承諾や銀行の可否判断が関与。
  • コルレス(中継銀行):銀行間資金決済で中継する提携銀行。
  • 全銀システム:国内の銀行間振込を支える決済ネットワーク。
  • スクリーニング:制裁・マネロン等のコンプライアンスチェック。
  • 入金消込:入金を請求・債権データと突合して消し込む会計実務。

追跡に必要な情報チェックリスト

送金追跡は、情報が揃っているほど早く正確に進みます。以下を整えてから銀行・社内関係者へ連絡しましょう。

  • 送金日・依頼時刻(カットオフ前後の目安)
  • 取引ID/受付番号(国内)またはUETR・MT103(国際)
  • 送金金額・通貨、手数料負担区分(国際:OUR/SHA/BEN)
  • 送金人名義(英字/カナ表記の揺れも把握)
  • 受取人口座情報(口座番号、名義、銀行名、支店名、SWIFT/BIC、IBAN等)
  • 送金目的・請求書番号などの参照情報(Reference)
  • 受取人側での未着連絡の日時と担当者名(あればスクリーンショット)
  • 社内の支払承認・実行ログ(ERP/ネットバンキングの履歴)

ステータスの見方と意味

送金追跡でよく目にするステータスと、実務上の解釈ポイントです。

  • 受付済み(Pending/Processing):銀行内で受付。カットオフ後は翌営業日の処理になることあり。
  • 発信済み(Sent/Outbound):決済ネットワークへ電文発信。相手行到達前後の段階。
  • 中継中(In Transit):中継銀行を経由。経路上での時差・営業日差に留意。
  • 保留(On Hold/Compliance Review):制裁・マネロン等の審査、受取情報の不備で一時停止。
  • 着金済み(Credited):受取人口座に入金反映済み。ただし締め時間や通帳反映タイミングに注意。
  • リジェクト/返金(Rejected/Returned):口座不在、名義相違等で資金が戻る。戻りに日数がかかる場合あり。

トラブルの主な原因と対処フロー

よくある原因

  • 名義表記の差異(全角/半角、ミドルネーム、省略、旧姓など)
  • 口座番号・支店コードの入力ミス、受取銀行統合後の支店名変更
  • コンプライアンス保留(制裁リストヒット、目的不明確、裏付書類不足)
  • 国際送金での中継銀行手数料控除による着金額不足
  • カットオフ後の受付による翌営業日処理、時差・休日の影響
  • 受取銀行側システムの定期メンテナンスや一時障害

対処フロー(現場実践)

  • 送金元のネットバンキング履歴・承認ログを確認(誤送金や二重送金を排除)
  • 取引ID(国内)またはUETR/MT103(国際)を取得し、送金銀行へ一次照会
  • 受取人にも、受取銀行の入金部門での検索依頼を依頼(名義揺れ・入金メモ参照)
  • 保留理由がコンプライアンスの場合、請求書・契約書・インボイス・荷為替書類等の追加資料を提出
  • 口座不在や名義相違が確定したら、組戻しまたは訂正手続を送金銀行と協議
  • 期日が差し迫るファイナンス案件は、代替決済(再送金、別経路、当日扱い)を検討し、関係者へ時系列で共有

ファクタリングでの送金追跡の実務

ファクタリングでは「買取代金の送金」と「債務者からの入金」の双方で送金追跡が発生します。資金繰りに直結するため、着金の確度とタイミング管理が要です。

  • 買取代金の送金追跡:クライアントへの当日資金手当のため、電信扱い・当日扱いを選択し、取引ID/UETRを即時共有。着金報告のSLA(目標時間)を設ける。
  • 債務者入金の追跡:期日未着は延滞・債権回収リスク。請求書番号・振込人名義のブレを想定した消込ルールと、受取銀行の入金照会ルートを整備。
  • 三者間ファクタリング:債務者への債権譲渡通知後は、入金口座変更の徹底と、誤入金時の組戻しフロー(債務者・銀行・法務連携)を事前合意。
  • 監査・エビデンス:MT103/振込明細の保管、入金消込の証跡、未達時の照会履歴を一元管理(期日管理台帳と紐付け)。

銀行・貸金業の実務ポイント(コンプライアンスと顧客対応)

銀行や貸金業では、送金追跡は単なる「状況確認」に留まらず、規制対応と顧客コミュニケーション設計が鍵です。

  • AML/CFT・制裁対応:スクリーニング保留時は、資金の出所・用途、契約・請求書の整合性確認を迅速化。追加書類リストをテンプレート化。
  • 顧客説明:ステータスと次アクション、見込み時間を明確化。「誰が」「何を」「いつまでに」行うかを共有。
  • 代替手段の提示:期日が厳しい場合、再送金(別経路・別通貨)、一時立替、エスクローなどを検討(社内規程の範囲内)。
  • 記録と再発防止:名義フォーマット、定型の受取人マスター、休日カレンダー(相手国含む)を活用し誤りを低減。

手数料・所要時間の目安

送金追跡自体に、銀行所定の「照会手数料」や「調査手数料」がかかる場合があります。金額や時間は銀行・国・経路により大きく異なります。

  • 国内送金の照会手数料:無料〜数千円程度(各行所定)。所要は即日〜数営業日。
  • 国際送金の調査手数料:数千円〜数万円程度(中継銀行分が追加されることも)。所要は1営業日〜数週間。
  • 組戻し:相手方の承諾や銀行判断が必要で、手数料と日数が発生しやすい。
  • gpi対応:UETRがあれば進捗把握が早い。非対応・非稼働時間帯は時間を要しやすい。

送金追跡を依頼するときのメール例(社外・銀行向け)

件名:国際送金の追跡(UETR共有のお願い)

お世話になっております。下記送金について受取人側で未着との連絡があり、追跡をご依頼いたします。

送金日:2025年10月10日

金額・通貨:USD 25,000

送金人名義:ABC Co., Ltd.

受取人:XYZ Pte. Ltd.

受取銀行:ABC Bank Singapore(SWIFT:ABCDEFXX)

UETR:不明(取得可能であればご共有ください)/MT103コピーの発行もお願いいたします。

手数料区分:OUR

先方では「未着」との回答のため、現ステータスと保留理由、着金見込みをご教示ください。お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。

チェックリスト(社内標準化におすすめ)

送金追跡を素早く行うために、社内で以下を標準化しておくと効果的です。

  • 支払実行時に取引ID/UETRを必ず記録・共有(ERP連携)
  • 受取人マスターに正式名義・必要項目(SWIFT/IBAN等)を完備
  • 請求番号・リファレンスの統一ルール(入金消込のヒント)
  • 期日逆算の送金カレンダー(相手国の祝祭日も反映)
  • 照会依頼のテンプレート化(メール・社内申請フォーム)
  • エビデンス保管(MT103/振込明細、やり取り履歴、対処結果)

よくある質問(FAQ)

送金追跡は誰が依頼できますか?

原則として送金を実行した銀行・金融機関を通じて行います。取引IDやUETRを持つ送金人側が一次窓口となるのが一般的です。受取人側からは、受取銀行に入金照会を依頼できます。

どれくらい待ってから追跡すべきですか?

国内は通常即時〜当日。翌営業日になっても未着なら照会がおすすめ。国際送金は通貨・国・経路により、1〜3営業日は様子見の余地がありますが、期日がある場合は即日UETRでの確認が安全です。

UETRが分からないと追跡できませんか?

UETRがあると迅速ですが、なくても送金銀行の取引番号やMT103コピーで追跡可能です。まずは送金銀行に照会を依頼しましょう。

追跡しても返金や着金が保証されますか?

保証ではありません。追跡は所在と原因を明らかにするための手段で、対応(資料提出、訂正、組戻し等)が別途必要になることがあります。

手数料区分(OUR/SHA/BEN)は追跡に影響しますか?

はい。BENやSHAでは中継銀行・受取銀行で手数料が控除され、受取額不足による照合エラー・保留が起きることがあります。期日重視ならOURが無難です(取引先合意に従う)。

ケーススタディ:ありがちな3つの未着シナリオ

シナリオ1:国内の名義ゆれ。株式会社/(株)やスペース有無で受取銀行が保留。送金銀行照会→受取銀行と名義一致の確認→着金反映。

シナリオ2:国際送金でコンプライアンス保留。インボイスと契約書の提出要求。用途説明と書類提出で解除、翌営業日に着金。

シナリオ3:中継銀行手数料控除で受取額不足。請求額と着金額不一致のため受取側が入金保留。差額の再送金またはリカバリー手続で解消。

ミスを防ぐためのコツ

送金追跡は「事後対応」ですが、事前の設計で大半は回避できます。

  • 正式名義・英文住所・IBAN等の事前確認(サンプル請求書で検証)
  • 参照情報(Invoice No.等)を電文に必ず記載
  • 期日逆算での送金(時差・休日・カットオフを考慮)
  • 高額・重要送金はテスト送金や小額での経路確認を検討
  • gpi対応の経路を優先し、UETRを必ず取得・共有

まとめ:送金追跡は「情報×順序×連携」が命

送金追跡は、ただ「銀行に聞く」作業ではありません。正確な取引情報を揃え、送金銀行→(必要に応じて)中継銀行→受取銀行の順序で、関係者と必要書類を素早くやり取りすることが肝要です。国内・国際、ファクタリング・一般送金いずれでも、チェックリストとテンプレートを整え、UETRやMT103などのエビデンスを確実に押さえておけば、対応速度と成功率は大幅に上がります。今日から実務に取り入れ、未着・遅延のストレスを最小化していきましょう。

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記事執筆者
中島康彦 (なかじまやすひこ)

■ファクタリング実務・審査の専門家/金融ライター。
大手ファクタリング会社にて2者間・3者間・医療ファクタリングの組成・審査・導入支援を5年間担当。与信設計、債権譲渡禁止特約への実務対応、反社・不当条項チェック、請求書真正性の検証、適正手数料レンジの見立てなど、現場で培った知見をもとに、安全性・適法性・スピードのバランスを取った資金化支援を行ってきました。
現在は金融ライターとして**「ファクタリングナビ」で一次情報に基づく解説・検証記事を執筆。建設・運送・医療・ITを中心に、即日資金化の実務から資金繰り改善の中長期設計まで、経営者が意思決定に使えるコンテンツを目指しています。最新の制度・ガイドライン・判例等**を参照し、誤情報の排除と透明性を重視します。

■実績・取り組み
ファクタリング実務 5年(2者間/3者間/医療)
審査・与信・契約レビュー:数百件規模の案件に関与
手数料の妥当性評価・不当条項チェックの社内指針作成に参画
業界別(建設/運送/医療/IT)での導入支援経験
一次情報重視:制度・法改正の追随/誤情報の是正

■監修・寄稿・登壇
監修:ファクタリングの基礎・実務に関する記事多数
寄稿:中小企業向けメディア/資金調達メディア
登壇:資金繰りウェビナー

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