本人書類の意味と金融・ファクタリングで求められる書類一式、審査を早めるコツ
「本人書類って、結局なにを出せばいいの?」――口座開設、資金調達、ファクタリングなどの手続きを進めると、必ずと言っていいほど求められるのが「本人書類」です。けれど、運転免許証とマイナンバーカードはどちらが良い?住所が違っていたら?パスポートは有効?など、初めてだと迷いやすい点がたくさんあります。本記事では、金融・為替・貸金業・ファクタリングの現場で日常的に使われる業界ワード「本人書類」を、初心者の方にもわかりやすく整理。何が本人書類に当たるのか、どの組み合わせが望ましいのか、審査をスムーズにする撮影・提出のコツまで、実務に役立つ形で解説します。
業界ワード(本人書類)
| 読み仮名 | ほんにんしょるい |
|---|---|
| 英語表記 | identity documents(KYC documents) |
定義
本人書類とは、取引時確認(KYC)において、申込者本人(個人)または法人の代表者・実質的支配者の氏名・住所・生年月日など「本人確認事項」を証明するために提出する公的書類・補助書類の総称です。金融機関、貸金業者、資金移動業者、ファクタリング会社などで、なりすまし防止・マネロン対策(犯収法対応)・債権の適正な譲渡や貸付判断のために提出が求められます。一般に、顔写真付きの一次書類(例:運転免許証、在留カード等)を主とし、必要に応じて現住所等を補完する二次書類(例:住民票、公共料金領収書等)を併せて提出します。
なぜ本人書類が必要?
本人書類の提出は「面倒ごと」ではなく、取引の安全性を高めるための基本ルールです。背景には、犯罪による収益の移転防止に関する法律(いわゆる犯収法)に基づくKYC(Know Your Customer=顧客確認)の義務、反社会的勢力の排除、なりすまし・不正申込の抑止、そして債権・資金の流れの透明化があります。とくにファクタリングや為替(国内・海外送金)、貸金では資金の出入りが絡むため、本人確認の精度が審査スピードと可否を左右します。本人書類の精度が高いほど、再提出や確認コールが減り、結果として審査が早く進みます。
本人書類の種類と可否の目安
一次書類(顔写真付きの公的身分証)
金融・ファクタリングの現場で最も信頼されるのが、顔写真付きの一次書類です。以下が一般的な例です(各社基準により異なるため、最終的には案内に従ってください)。
- 運転免許証・運転経歴証明書(両面。裏面に住所変更があれば必ず裏も)
- マイナンバーカード(個人番号面は提出不要。表面のみ)
- パスポート(国内手続では住所欄がない新様式の扱いに注意。住所確認が必要な場合は補助書類を併用)
- 在留カード/特別永住者証明書(在留期間・資格の有効性を確認)
- 各種福祉手帳など顔写真・氏名・生年月日・現住所が確認できるもの(可否は要確認)
ポイントは「有効期限内」「氏名・生年月日・現住所が鮮明に確認できること」。住所が旧住所のままの場合は、補助書類で現住所を補完するのが一般的です。
二次書類(補助書類・現住所補完用)
一次書類に現住所の記載がない/一致しない場合や、非対面取引で強度を高める目的で求められる補助書類です。発行から一定期間内(目安:6か月以内)が一般的です。
- 住民票の写し(マイナンバー記載なしのもの)
- 公共料金の領収書・請求書(電気・ガス・水道・固定通信など。氏名・現住所・発行日が必要)
- 納税証明書・社会保険料の領収書等、官公庁発行の住所確認書類
- 印鑑登録証明書(住所確認として使われることあり)
- 健康保険証(取り扱いは事業者により差。原本マスキングの指示に従う)
健康保険証は制度移行の関係で取り扱いが変わりやすく、可否が分かれる傾向です。必ず最新の案内を確認してください。
法人取引で併せて求められやすい書類
法人が申し込む場合、「代表者の本人書類」に加えて「法人の確認書類」や「実質的支配者の申告書」等が求められます。
- 履歴事項全部証明書(商業登記:発行から一定期間内)
- 法人の印鑑証明書(任意の場合あり)
- 実質的支配者(UBO)に関する申告書・同意書
- 代表者の本人書類(一次書類+必要に応じ補助書類)
- 担当者が代理で申請する場合、担当者本人の本人書類や委任関係の確認
ファクタリングではこれらに加え、譲渡対象の売掛債権の実在性を確認するための請求書・納品書・契約書、入金通帳の写し等もセットで求められます。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では以下のように呼ばれることがあります。
- 本人書類=本人確認書類=身分証(ID)
- 一次書類(顔写真付き)/二次書類(補助書類)
- KYC書類/取引時確認書類/住所確認書類
使用例(3つ)
- 「申込フォームに本人書類をアップロードしてください。免許証(両面)かマイナンバーカード(表面)がスムーズです」
- 「パスポートには現住所欄がないため、住民票か公共料金の領収書を二次書類として併せてご提出ください」
- 「法人申込のため、代表者の本人書類と、履歴事項全部証明書、実質的支配者の申告書をご用意ください」
使う場面・工程
金融・ファクタリング・為替での典型的な流れは以下のとおりです。
- 申込(Web/来店)
- ヒアリング(会社概要・取引目的等)
- 本人書類の回収(アップロード/撮影/郵送)
- KYC/反社チェック(データベース照合、名寄せ)
- 審査(属性・債権実在性・入金実績の確認)
- 契約(電子契約・対面)・実行(口座入金・債権譲渡登記等)
関連語
- 取引時確認(KYC):取引開始時に行う本人確認手続き
- CDD/EDD:顧客の適切性評価(通常/強化)
- 実質的支配者(UBO):最終受益者。法人取引で確認が必要
- eKYC:オンラインで完結する本人確認(動画・ICチップ読取等)
- 補助書類:現住所等を補完する二次書類の総称
- 反社チェック:反社会的勢力との関係排除確認
提出前チェックリスト(審査をスムーズに)
以下を満たすと再提出のリスクが大幅に減り、審査が早くなります。
- 有効期限内か(在留カード・免許証・パスポートの期限切れに注意)
- 現住所が最新か(転居後は免許証の裏書き/住民票で補完)
- 氏名・生年月日の表記ゆれなし(旧字体・ミドルネーム・婚姻前後の姓名に注意)
- 両面が必要な書類は表裏とも提出(免許証の住所変更欄など)
- カラーで四隅まで写っている(トリミングし過ぎない、影・反射・ピンぼけNG)
- マイナンバーは写さない(個人番号は収集目的が限定。表面のみ、番号面は隠す)
- 画像の解像度・ファイルサイズ(目安2〜5MB、JPEG/PNG/PDFなど案内に従う)
- 撮影時のコツ:明るい場所で、真正面から、台に置いて撮る。フラッシュの反射は避ける。
よくあるつまずきと対処法
- 住所が違う
免許証の裏面に新住所の記載があれば、必ず裏面も提出。裏書き未了の場合は、住民票や公共料金領収書で補完します。
- パスポートしかない
新様式パスポートは住所欄がないため、原則として二次書類を併用。可能なら運転免許証やマイナンバーカード(表)を用意すると早いです。
- マイナンバー(12桁)が写り込んだ
番号は不要かつ収集目的が限定されるため、付箋や台紙で物理的に隠して撮影してください。既に提出した場合は、削除・再提出の案内に従いましょう。
- 在留カードの期限が近い
有効期間が残り僅かだと追加確認が入ることがあります。更新予定があれば、更新後の写しを求められるケースもあります。
- 健康保険証は使える?
取り扱いは事業者により差があります。制度移行の影響で可否が変わりやすいため、必ず最新の提出基準を確認してください。
- 婚姻・離婚で姓名が変わった
本人書類の姓名と申込名義を一致させます。移行期は戸籍謄本や住民票の記載で補足説明を求められることがあります。
eKYC時代の本人書類の扱い
非対面取引が一般化し、eKYCが広く導入されています。代表的な方式は以下のとおりです。
- 書類撮影+本人セルフィーの一致判定(なりすまし防止のライフネス検知を実施)
- ICチップ読取(マイナンバーカードや在留カードのIC情報をスマホで読み取り)
- 公的データベース照合(転送不要郵便や補助書類と組み合わせ)
いずれも「鮮明で改ざんのない本人書類の画像」が前提です。画質が悪い、端が切れている、反射や色飛びがあると自動判定で弾かれやすく、手動審査に回って時間がかかります。撮影は明るい場所で、書類を平らに置き、枠内に四隅が入るように行いましょう。
ファクタリングでの実務ポイント
ファクタリング(2社間・3社間)では、本人書類の精度がスピードに直結します。法人の場合は「代表者の本人書類+法人確認書類+UBO申告」が基本。個人事業主の場合も「本人書類+事業実態確認(開業届写しや請求書・通帳入出金の写し等)」がセットで求められます。
- 2社間ファクタリング
オンライン完結が多く、eKYCの要件に合致する撮影品質が重要。一次書類(免許証・マイナンバーカード表・在留カード)を推奨し、住所相違は二次書類で即補完すると早いです。
- 3社間ファクタリング
債務者通知や同意書の取得が発生。代表者の本人書類の他、社判・印鑑証明、登記事項証明書等の整備も同時に進めると、全体のリードタイムが短縮します。
- 誰の本人書類が必要か
法人の代表者は必須。実務で申込・契約を担当する代理人がいる場合、その担当者の本人確認(名刺・在籍確認・委任関係)を追加で求められることがあります。
なお、ファクタリング会社によっては、業界特性(医療・建設等)に応じて補助書類の要件が細かく定義されています。初回面談・ヒアリングの段階で「提示可能な本人書類の種類」と「住所一致の状況」を共有すると、必要書類リストが精緻化され、往復を減らせます。
安全な提出と情報保護の基本
本人書類は個人情報の塊です。次の点を守りましょう。
- 正規の提出手段のみ利用(公式ポータル・正規のアップロードURL・暗号化メール等)
- チャットアプリや個人SNSへの送付は避ける(情報漏えいのリスク)
- マイナンバーは収集目的が限定(税務・社会保障等)。KYC目的では原則不要
- 提出後は、端末の画像データを適切に削除・保管(家族共有アルバムなどへの自動同期をオフ)
ミニ用語集(関連トピックの深掘り)
- 本人確認事項
個人は「氏名・住所・生年月日」。法人は「名称・本店所在地・事業内容」等。リスクに応じて取引目的や資金の原資確認を求められることも。
- 取引目的・職業確認
送金や資金調達で重視される項目。マネロン対策上、用途や原資の説明資料(請求書・契約書等)を求められる場合があります。
- 名寄せ
同姓同名や過去申込との突合。漢字・カナの表記ゆれ、ハイフンの有無などで一致しないと余計な確認が発生します。
ケース別アドバイス
- 最速で審査を通したい
運転免許証(表裏)+公共料金領収書(氏名・現住所・発行3か月以内が望ましい)を一度に提出。撮影は高解像度で。法人なら登記簿(履歴事項全部証明書)も同時に。
- 免許証を持っていない
マイナンバーカード(表)や在留カードを用意。パスポートしかない場合は住民票などの二次書類を併せて提出。
- 海外在住・帰国したばかり
国内住所の証明が鍵。住民登録後の住民票、国内の公共料金領収書等で補完。海外発行IDの可否は事前確認が必要です。
提出ステップ(実践ガイド)
- 1. 手持ちの一次書類を確認(免許証/マイナンバーカード表/在留カード等)
- 2. 住所が一致しない場合は、住民票・公共料金領収書などの二次書類を準備
- 3. スマホ撮影:明るい場所で書類全体をフラットに撮影。四隅・文字の鮮明さを確保
- 4. ファイル名に「書類名_表」「書類名_裏」などを付けると確認が早い
- 5. 申込情報(氏名・住所・生年月日)と完全一致しているか最終チェック
- 6. 公式のアップロードリンクで送信。送信後の控え(受付完了画面やメール)を保存
よくある質問(FAQ)
- Q. 白黒でも大丈夫?
A. 多くの事業者はカラーを推奨または必須としています。カラーで提出してください。
- Q. 何かを塗りつぶしてもいい?
A. マイナンバー(個人番号)は隠すのが原則。その他の項目は原則不可。マスキングの可否は指示に従ってください。
- Q. 画像が大きすぎてアップできない
A. 解像度を落とし過ぎない範囲で圧縮(長辺2000〜3000px程度が目安)。PDF化も有効です。
- Q. 現住所と郵送先が違う
A. KYCでは住民票上の現住所確認が重要。郵送物は転送不要で届く住所が基準になることがあります。
まとめ
本人書類は、金融・為替・貸金・ファクタリングの「入口」を決める最重要書類です。顔写真付きの一次書類を基本に、現住所の不一致は二次書類で即補完。カラー・四隅・鮮明さ・期限内という基本を押さえ、マイナンバーは隠す――この“型”を守るだけで、審査は確実にスムーズになります。法人なら代表者の本人書類に加え、登記簿やUBO申告も同時に揃えるのが効率的。迷ったら、いま持っている書類の種類と住所一致の状況を先に共有し、事業者の最新ガイドに沿って準備しましょう。正しく整えた本人書類は、資金調達・送金・口座開設・ファクタリングのスピードと確度を着実に高めてくれます。
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