目次
- 追補資料の意味と実務でのつくり方:ファクタリング・銀行・為替で差がつく提出術
- 業界ワード(追補資料)
- 定義
- ニュアンスと誤解されやすい点
- 法的な位置づけ(一般論)
- 現場での使い方
- 言い回し・別称
- 使用例(3つ)
- 使う場面・工程
- 関連語
- ファクタリングで求められやすい追補資料リスト
- 2社間ファクタリング(売掛先非通知)
- 3社間ファクタリング(売掛先通知型)
- 銀行融資・貸金業での追補資料
- 貿易・為替取引での追補資料
- 追補資料を通しやすくする作成・提出のコツ
- よくあるNGと回避策
- ケース別の着眼点(ファクタリング)
- SaaS・継続課金の請求
- 建設・請負・派遣などの長期案件
- 流通・卸売(チェーン本部案件)
- ミニ用語辞典(関連ワード)
- 提出の流れ(標準イメージ)
- FAQ(よくある質問)
- Q. とりあえず全部送りつければ早いですか?
- Q. 原本提出が必要ですか?
- Q. 英語の「追補資料」は何と言えばいい?
- Q. どのくらい過去まで必要?
- チェックリスト(送付前の最終確認)
- まとめ:追補資料は“量”より“論点”
追補資料の意味と実務でのつくり方:ファクタリング・銀行・為替で差がつく提出術
「追補資料って具体的に何を出せばいいの?」——ファクタリングや融資のやり取りで、担当者から急に求められて戸惑う方は少なくありません。この記事では、金融の現場で日常的に使われる「追補資料」の意味、使われ方、用意すべき書類の具体例、通りやすくするポイントまで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。読み終えた頃には、担当者とのコミュニケーションがスムーズになり、審査の時間短縮にもつながるはずです。
業界ワード(追補資料)
| 読み仮名 | ついほしりょう |
|---|---|
| 英語表記 | Supplementary documents / Additional supporting documents |
定義
追補資料とは、申込書や基本書類を提出した後に、審査・与信・契約実行の判断を精緻にするために追加で求められる「補足資料」の総称です。もともとの提出物(例:申込書、基本的な身元・会社情報、主要契約書など)だけでは判断に足りない点を埋める目的で、金融機関、ファクタリング会社、商社、銀行(為替)などから提示されます。決まったフォーマットがある場合もあれば、既存の帳票やエビデンス(証跡)を切り出して提出する場合もあります。
ニュアンスと誤解されやすい点
「追加書類」と同義に捉えられがちですが、追補資料は単に量を増やすのではなく、審査の論点をピンポイントで補う資料です。つまり「なぜ必要か」「何を確認したいのか」が存在します。ここを理解して準備すると、過不足が減り、やりとりが短縮されます。
法的な位置づけ(一般論)
追補資料自体は法律上の特定用語ではありませんが、提出した資料は契約判断・コンプライアンス・KYC/AML(本人確認・マネロン対策)に直結し、虚偽や改ざんは重大な契約違反・法令違反に該当し得ます。原本性・整合性・最新性の確保は必須です。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では以下のように呼ばれることがあります。
- 追加資料/補足資料(一般的)
- 裏取り資料・エビデンス(証跡を強調)
- 与信補足・審査補足(審査の文脈)
- 検収エビデンス・入金エビデンス(売掛確認の文脈)
使用例(3つ)
- 「売掛先の実在確認のため、直近の取引に関する追補資料(発注書・納品書・検収書・請求書控え)をご提出ください。」
- 「与信枠見直しにつき、月次試算表と売掛金年齢表を追補でお願いします。」
- 「入金サイトの実績がわかる通帳コピー(該当取引の入金部分)を追補資料として共有ください。」
使う場面・工程
追補資料は、主に以下のタイミングで求められます。
- 事前審査後の与信深掘り(会社の実情・キャッシュフローの確認)
- 取引スキームの確定前(2社間/3社間の適合性、売掛債権の成立確認)
- 契約実行直前(本人確認・反社チェック・最終の整合性確認)
- 実行後のモニタリング(回収実績、延滞有無、期ズレの原因確認)
関連語
- 与信(信用審査):支払い能力・信頼性の評価。
- KYC/CDD:顧客確認・リスク把握のための手続き。
- エビデンス:事実を裏付ける証拠書類全般。
- 売掛債権の成立要件:発注・履行・検収・請求が連続していることの確認。
ファクタリングで求められやすい追補資料リスト
ファクタリングでは「売掛債権が実在・確定・譲渡可能であるか」を確認します。2社間と3社間で必要書類の重みづけが異なります。
2社間ファクタリング(売掛先非通知)
売掛先に通知しない分、エビデンス重視で詳細な裏取りが求められます。
- 各取引の成立・履行確認
- 発注書・注文書(PO)
- 納品書・受領書・検収書(メール同等の合意ログでも可の場合あり)
- 請求書控え(売掛先宛)
- 入金実績の裏付け
- 通帳コピー(過去3〜6カ月、対象売掛先の入金ハイライト)
- 売掛金年齢表(Aging:当月・30日・60日・90日…)
- 財務・資金繰りの把握
- 直近の月次試算表・決算書
- 資金繰り表(今後3〜6カ月)
- 借入一覧表・リスケ中の有無
- コンプライアンス関係
- 本人確認書類(代表者)・登記簿謄本・印鑑証明
- 反社チェック同意書
- 税金の納付状況(納税証明書や未納・分納の説明)
3社間ファクタリング(売掛先通知型)
売掛先からの債権譲渡承諾・支払い変更同意が得られるため、契約関連の追補が増えます。
- 債権譲渡通知書・承諾書(売掛先の社判あり)
- 基本契約書・個別契約書のドラフト確認(差し戻しのための履歴)
- 売掛先与信に関連する情報(企業情報、支払サイト、直近取引実績)
- 回収口座の指定変更に関するエビデンス(書面・メール合意)
銀行融資・貸金業での追補資料
融資では、返済可能性・事業継続性・担保評価を補強する資料が中心です。
- 財務資料
- 決算書一式(BS/PL/CF・注記)、科目内訳明細
- 月次試算表、売上推移、粗利分析
- 借入金一覧、返済予定表
- 資金繰り・計画
- 資金繰り表(短期・中期)
- 事業計画(売上根拠、受注済案件一覧)
- 主要取引先の契約・発注書
- 税務・法務
- 税務申告書、納税証明(その1・その2 等)
- 登記簿、固定資産台帳、担保物件の評価資料
- 代表者個人の収入・確定申告(必要に応じて)
貿易・為替取引での追補資料
輸出入・L/C(信用状)取引では、書類一致・貿易実務の形式要件を満たす補正・追補が焦点です。
- インボイス(Commercial Invoice)、パッキングリスト
- B/L(船荷証券)またはAWB(航空運送状)
- 保険証券、原産地証明書、検査証明
- 日付・数量・船積期限・品目名の整合修正(ディスクレ訂正)
- 為替手形の裏書・記載補足、引受確認のエビデンス
「どこが合っていないのか」「どの記載を整合させるのか」を担当行に確認し、該当部分のみをスピーディーに追補するのがコツです。
追補資料を通しやすくする作成・提出のコツ
- 請求→納品→検収→入金の流れを一枚の時系列で示す
- 発注書、納品書、検収書、請求書、入金通帳の該当ページを同一案件で束ねる。
- ハイライト・付箋を活用
- 相手の会社名、金額、日付、伝票番号をマーカーで示すと審査が早い。
- 最新性の担保
- 月次試算表・売掛金年齢表は「直近月末締め」で提出。古いと差し戻しが起きる。
- 整合性の自己チェック
- 金額・数量・日付のズレ、社名表記ゆれ(株式会社の前後など)を事前確認。
- ファイル名・バージョン管理
- 例:2025-01_売掛A社_追補_検収書.pdf のように規則化。差し替えはv2、v3で明確化。
- 個人情報・機微情報の配慮
- 不要部分は黒塗り(マスキング)を検討。ただし必要情報は隠さないバランスが重要。
- メール送付時の本文要約
- 「何の論点に対して何を追補したか」を1〜3行で要約して送る。
よくあるNGと回避策
- 一部だけ抜けている
- 例:請求書はあるが検収がない。→ 代替の受領確認メール、EDI画面のキャプチャなどで補完。
- 画質が悪く判読不能
- スキャナの解像度は300dpi以上、スマホ撮影は斜めにならないよう台の上で。
- PDFがパスワード付きで審査側が開けない
- 事前に共有方法を確認。ZIP暗号化が禁止の会社もある。
- 改ざんと誤解される加工
- 数字の上書き加工は厳禁。必要箇所のマーキングに留め、原本性を維持。
- 論点に合っていない大量送付
- 「求められた根拠」に絞る。迷ったら担当者に目的を確認。
ケース別の着眼点(ファクタリング)
SaaS・継続課金の請求
サービス提供の継続性と検収代替の証跡(ログイン実績、利用レポート、契約書の役務範囲)を添付。請求サイクルと入金サイクルの実績を通帳で示すと評価が上がります。
建設・請負・派遣などの長期案件
出来高や締め日・検収日が重要。出来高報告書、現場受領印のある伝票、タイムシート、派遣先からの受領確認メールなど、工程と金額がつながるように束ねます。
流通・卸売(チェーン本部案件)
EDIやポータル画面の発注・納品受領のスクリーンショットが有効。SKUと数量の整合を確認し、返品・値引の控除がある場合は明細も追補します。
ミニ用語辞典(関連ワード)
- 売掛金年齢表(Aging):売掛の滞留期間を区分した一覧。延滞や集中リスクの把握に必須。
- 検収書:納品物の受領・検査完了を示す書面。売掛成立の重要エビデンス。
- 譲渡禁止特約:契約上、債権の譲渡を禁じる条項。ある場合はスキーム再設計が必要。
- 回収実績:過去の入金の履歴。サイト通りの入金か、遅延クセがないかを判断。
提出の流れ(標準イメージ)
- ヒアリング:求めている論点(実在性、金額整合、KYC、資金繰り等)を確認。
- 資料ピックアップ:必要最小限+補強になる関連資料を選定。
- 整形:案件別に束ね、ファイル名と日付を整理。重要箇所にハイライト。
- 提出:メール・ポータル・クラウドで送付。本文に要約と内訳を記載。
- 差し戻し対応:不足箇所を迅速に補填。懸念点は先回りで説明文を添える。
FAQ(よくある質問)
Q. とりあえず全部送りつければ早いですか?
A. 逆効果になりがちです。審査側は「論点と関係する最低限」を好みます。まず目的を確認し、関係資料を束ねて簡潔に説明する方が早く終わります。
Q. 原本提出が必要ですか?
A. 多くはスキャンで足りますが、契約・印鑑・譲渡関係は原本や原本照合が求められることがあります。指示に従いましょう。
Q. 英語の「追補資料」は何と言えばいい?
A. “Supplementary documents”や“Additional supporting documents”が一般的です。目的を添えて“for credit review”“for verification”などと書くと伝わりやすいです。
Q. どのくらい過去まで必要?
A. 通常は直近3〜6カ月の入金実績、直近決算と最新月次が目安です。業種・案件により変動します。
チェックリスト(送付前の最終確認)
- 対象取引の「発注→納品→検収→請求→入金」が一連で把握できるか
- 会社名・日付・金額が全書類で一致しているか
- 最新月次・Aging・資金繰り表は直近データか
- ファイル名・ページ順・ハイライトで閲覧性は担保されているか
- 機微情報の取り扱い(遮蔽/共有許可)は適切か
まとめ:追補資料は“量”より“論点”
追補資料は、単なる「追加書類」ではなく、審査の疑問点を埋めて合意形成を早めるための「ピンポイントな証拠集」です。ファクタリングでは売掛債権の実在・確定・回収見込み、銀行融資では返済可能性と事業継続性、為替では書類一致の担保が主な論点。求められた目的を正確に把握し、整合性・最新性・閲覧性を意識して提出すれば、やり取りの手戻りが減り、実行スピードが大きく変わります。迷ったら「どの論点を補強したいのか」を担当者に一言確認する——これが、現場で最も効く近道です。
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