決算整理とは?初心者にもわかる基本手順とプロが教えるミスしないポイント

目次

決算整理をやさしく解説:金融・ファクタリング現場で押さえる意味と実務のコツ

「決算整理って具体的に何をするの?」「ファクタリングを使ったときの処理はどうすれば…?」そんな不安を感じている方へ。この記事では、金融業界やファクタリング会社、銀行の審査現場でも日常的に使われる業界ワード「決算整理」を、初心者にもわかりやすく、実務に役立つ形で解説します。仕訳の考え方から、現場での言い回し、審査でチェックされるポイント、ミスを防ぐチェックリストまで、必要な情報をまとめてお届けします。

業界ワード(決算整理)

読み仮名 けっさんせいり
英語表記 Year-end adjusting entries(Closing adjustments)

定義

決算整理とは、決算日において、期間損益を正しく計上し、貸借対照表・損益計算書などの財務諸表を適正に作成するための「期末調整・整理の一連の手続き」を指します。具体的には、未収未払の計上、前受前払の整理、棚卸資産の評価、減価償却、各種引当金の計上、外貨建取引の期末評価、税金の見積計上などを含みます。ファクタリングや為替評価が絡む場合は、それらの会計処理を期末時点の実態に合わせて仕上げることも「決算整理」に含まれます。

決算整理の全体像と目的

決算整理の目的は「期間適正」「網羅性」「一貫性」の3つです。すなわち、当期に属する収益・費用を漏れやズレなく計上し(期間適正)、期末時点の資産・負債・純資産の残高を正確に確定し(網羅性)、採用した会計方針と見積りを継続的に適用する(一貫性)ことです。これにより、社内管理・税務申告・銀行や投資家への説明に耐える決算書が作成できます。

  • 出力物の例:決算整理仕訳、決算整理後試算表、財務諸表(BS/PL/CF)、勘定科目内訳明細書、注記情報など
  • 主な対象:売掛・買掛、棚卸資産、固定資産、引当金、外貨建債権債務、税金、未収未払、繰延項目、手数料・利息など

現場での使い方

言い回し・別称

金融・会計の現場では、以下のような言い回しが一般的です。

  • 決算整理仕訳/整理仕訳/決算仕訳/決算調整
  • 決算整理前(後)試算表、精算表
  • 未収未払の計上、カットオフ調整、引当計上、評価替え、償却計上
  • (ファクタリングに関して)債権譲渡の計上、償還請求権の有無の判定、手数料の期間帰属

使用例(3つ)

  • 「棚卸と減価償却、引当の見積りまで含めて、金曜までに決算整理仕訳を切ってください。」
  • 「期末に売掛金の一部をファクタリングしたので、譲渡(または借入相当)として決算整理してください。手数料も当期費用です。」
  • 「外貨建て債権は決算レートで評価替えし、為替差損益を決算整理に反映しておいてください。」

使う場面・工程

決算月の月次締めが終わった後、以下の工程で決算整理が行われます。

  • 売上・仕入のカットオフ確認(出荷基準・検収基準などの整合)
  • 棚卸資産の実地棚卸と評価(原価法の整合性、評価損の要否)
  • 固定資産の減価償却、除売却の整理
  • 各種引当金(貸倒、賞与、返品、工事損失など)の合理的見積り
  • 未収収益・未払費用、前受収益・前払費用の計上
  • 外貨建債権債務の期末評価(為替差損益)
  • 税金の見積計上(法人税等)、必要なら税効果の整理
  • ファクタリングや割引手形、借入金など金融取引の整理
  • 決算整理後試算表の作成、決算書ドラフト作成、レビュー

関連語

  • カットオフ:期末に属する取引を当期に、翌期分を翌期に正しく振り分ける手続き
  • 精算表/決算整理後試算表:整理仕訳を反映して作成する最終的な試算表
  • 引当金:将来の費用・損失に備えた合理的見積りの負債(貸倒引当金・賞与引当金など)
  • 評価替え:外貨や棚卸資産などの評価額を期末時点に合わせる処理
  • ファクタリング:売掛債権の譲渡による資金調達(償還請求権の有無に注意)
  • 見せ金・粉飾:実態を歪めた決算対策。信用毀損のため厳禁

決算整理の基本手順とチェックリスト

1. 売上・仕入のカットオフ

出荷基準・検収基準など自社の認識基準に沿って、出荷日・検収日・請求日・入庫日を突合します。請求書締日と決算日のズレに注意し、未計上を未収/未払で補正します。

  • 証憑:受注書、出荷指図、納品書、検収書、請求書、入庫記録
  • 注意:返品・割戻・値引は発生見込みを合理的に見積り、必要に応じて引当計上

2. 棚卸資産の実地棚卸・評価

実地棚卸で数量を確定し、評価は原価法の一貫性を維持。不良・滞留品は評価損の検討対象です。製造業は仕掛品・製品の実地と実際原価の整合を確認します。

3. 固定資産と減価償却

期中取得・除却・売却の整理を行い、法定耐用年数や自社方針に従い減価償却を計上します。少額資産の取り扱いは税務基準との整合を確認します。

4. 引当金(貸倒・賞与など)

貸倒引当金は、過去実績や債務者の信用状況に基づいて合理的に見積もります。賞与引当金は支給義務が成立している範囲で計上。返品・工事損失など必要な引当も検討します。

5. 未収未払・前受前払

経費の請求書未着分は未払費用、当期発生の未入金の収益は未収収益で調整。サブスクや保険料などの期間性費用は前払費用/前受収益として振り替え、期間対応させます。

6. 外貨建債権債務の期末評価

期末時点の為替レート(多くはTTMなど客観的な公表レート)で評価替えし、差額を為替差損益として計上。ヘッジ取引がある場合は、採用している会計処理方針に従います。

7. 金融取引(ファクタリング・手形・借入)

ファクタリングの債権譲渡、手形割引、期末借入・返済、未払利息などを整理。手数料や利息は発生主義で当期費用に計上します。契約条件(償還請求権の有無等)を必ず確認します。

8. 税金の見積計上

税務上の加算・減算を踏まえ、法人税等の見積額を計上。必要に応じて税効果の整理を行い、翌期以降の繰延税金資産の回収可能性も検討します。

9. 決算整理後試算表から決算書へ

整理仕訳をすべて反映した後、決算整理後試算表を作成。そこからBS・PL・CF・注記等を仕上げ、内部レビューや会計事務所によるチェック、金融機関提出資料の整備まで行います。

ファクタリング・為替・銀行与信との関係

ファクタリングの決算整理仕訳の考え方

ファクタリングは契約形態により会計処理が変わります。期末に処理が跨るケースも多いため、決算整理で実態に合わせます。

  • 償還請求権なし(ノンリコース):債権のリスク移転が実質的に行われた場合、売掛金の消滅として処理し、受取額との差額を手数料(営業外費用や販売費及び一般管理費)として計上するのが一般的です。
  • 償還請求権あり(ウィズリコース):実質的に借入と同視される場合、売掛金は残し、受け取った現金を借入金等として計上。手数料は利息相当の費用として処理します。

仕訳イメージ(簡略)

  • ノンリコースの場合(受取額=売掛金−手数料)
    • 借方:現金預金(受取額)/貸方:売掛金(譲渡額)
    • 借方:支払手数料(手数料)/貸方:現金預金(手数料)
  • ウィズリコースの場合
    • 借方:現金預金(受取額)/貸方:短期借入金等(受取額)
    • 借方:支払利息・手数料/貸方:未払金(または現金預金)

ポイントは「契約実態の把握」と「証憑保存」。債権譲渡通知の有無、債務者倒産時の損失負担、買取明細、手数料率、入金消込方法などを精査し、決算整理で適切に反映します。

為替(外貨建取引)の決算整理

外貨建ての売掛金・買掛金は、期末レートで円換算し直します。差額は為替差損益へ。輸入の前払・輸出の前受がある場合は、期間対応に注意。為替予約等のヘッジがあるときは、採用している会計方針に沿って処理(繰延ヘッジ等)します。レートは客観的に検証可能な公表レートを用い、採用レートの社内ルールを明確にしておくとレビューがスムーズです。

銀行・貸金業の審査で見られるポイント

  • 決算整理前後の差異:棚卸・引当・評価替えでどれだけ損益やBSが動いたか
  • 売掛金の質:回収サイト、滞留・不良債権の比率、ファクタリング依存の有無
  • 資金繰りの平準性:決算直前の一時的調達(たとえば短期的な売掛金ファクタリング)の多用は、継続性の観点で注視されます
  • 会計方針・見積りの一貫性:引当金や棚卸評価が恣意的に変わっていないか
  • 外貨ポジションと為替感応度:評価損益とヘッジの整合

よくあるミスと防止策(プロの視点)

  • カットオフの漏れ:出荷済み・未請求/検収前・先請求のズレを突合。出荷・検収・請求・入庫の4点突合を標準化
  • ファクタリングの誤分類:償還請求権の有無だけでなく実質的なリスク移転を確認。契約・約款・通知の有無で総合判断
  • 手数料の期間帰属漏れ:長期化するファクタリングや借入の手数料は発生主義で按分。決算期を跨ぐ場合に注意
  • 外貨評価の基準ぶれ:採用レートのソースと適用時点を文書化し、毎期一貫適用
  • 棚卸の評価損見落とし:滞留・破損・型落ち品は評価減の検討。実地棚卸と価格データの2軸で点検
  • 引当金の根拠不足:過去実績、個別与信状況、合理的な算定根拠を稟議・社内文書に残す
  • 未払利息・割引料の失念:金融機関からの計算書を入手し、計上漏れを防止
  • 注記・内訳の軽視:勘定科目内訳明細書、関係会社残高、期末重要事象などは提出先(銀行・税務・監査)で重視されます

実務フロー(中小企業でも使える進め方)

週次〜月末

マスタ整備(得意先・仕入先・商品・為替ルール)、証憑の電子保存、月次締めの精度向上。これが決算期の負荷を大きく下げます。

決算月の前半

売上・仕入カットオフのルール再周知、棚卸準備(在庫ラベル・カウントシート・スキャン端末)、固定資産台帳の更新。

決算日〜翌週

実地棚卸→差異調整、未収未払の洗い出し、引当金の見積り、外貨評価、金融取引(ファクタリング等)の契約確認、整理仕訳の起票。

翌週以降

決算整理後試算表の作成、決算書ドラフト、代表レビュー、会計事務所レビュー、銀行向け資料セット(決算書・内訳・資金繰り表・注記相当情報)の整備。

ファクタリング活用時の注意点(決算観点)

  • 資金繰り目的の期末集中は要注意:一時的な現金確保はCF改善に見えますが、継続性や利益との整合を審査で見られます
  • 債権明細の整合:譲渡した売掛金は消し込み・相殺の整合を確保。残高明細・入金消込履歴をセットで保管
  • 会計処理の方針化:ノンリコース/ウィズリコースの判定手順、仕訳テンプレ、証憑の保管場所まで社内ルール化
  • コベナンツの確認:銀行借入契約の財務制限条項に抵触しないか、期末前に試算。必要なら事前相談

ケース別 仕訳イメージ(簡略)

未払費用の計上

借方:通信費(当期分)/貸方:未払費用

前払費用の整理

借方:前払保険料(翌期分)/貸方:保険料

貸倒引当金の繰入

借方:貸倒引当金繰入/貸方:貸倒引当金

外貨建売掛金の評価替え

借方:為替差損(評価損の場合)/貸方:売掛金(円換算額の減少)

減価償却費の計上

借方:減価償却費/貸方:減価償却累計額

中小企業の実務Q&A

Q1. 決算整理と月次締めは何が違う?

月次締めはスピード重視で概算や未計上が残ることがあります。決算整理は年1回(または中間)で精緻化し、財務諸表を対外公表・提出に耐える水準へ仕上げる工程です。引当金や評価替えなど、月次では省略する調整も網羅します。

Q2. ファクタリングを決算前に使うと銀行評価は下がる?

一概に下がるとは限りません。売掛回転期間の短縮や資金繰りの改善はプラスに働くこともあります。ただし、期末だけの一時的依存や実質借入相当の取引を資産オフに見せる運用は、継続性や透明性の観点で懸念されます。実態に即した会計処理と丁寧な開示が重要です。

Q3. 英語でどう説明する?

「Year-end adjusting entries」や「closing adjustments」と言います。海外関係者には、「to recognize accruals/deferrals, provisions, FX revaluation, depreciation, and to finalize financial statements」と補足すると伝わりやすいです。

Q4. 税理士や会計事務所に任せればよい?

委託は有効ですが、証憑の整備・社内ルール化・在庫の実地精度などは会社内部でしか担保できません。任せきりではなく、決算整理に必要な情報と根拠を社内で準備しておくと、早く正確な決算になります。

Q5. どこまでやれば「完了」?

整理仕訳を反映した「決算整理後試算表」が作成でき、レビューで重要な修正が残っていない状態が目安です。内訳明細・注記のドラフトまで揃っていれば、金融機関や株主への説明もスムーズです。

用語ミニ辞典(手早く確認)

  • 決算整理仕訳:決算のために行う調整仕訳の総称
  • 決算整理前試算表:調整前の残高。月次締めの延長線で作成
  • 決算整理後試算表:整理仕訳を反映した最終版の試算表
  • 繰延資産:開業費など、将来にわたり費用配分するために一時的に資産計上するもの
  • 税効果会計:会計上の利益と課税所得の差を調整し、税金費用を適切な期間に配分する考え方

チェックリスト(提出先に強い決算に仕上げる)

  • 証憑が取引単位でひも付く(受注→出荷→検収→請求→入金)
  • 棚卸差異の原因分析メモがある(計数ミス/滞留/破損など)
  • 引当金の算定根拠が文書化されている(計算シート+承認)
  • 外貨レートのソースと適用日時が明記されている
  • ファクタリング契約・買取明細・通知書の保存と仕訳方針が一致
  • 未払利息・手数料・割引料の漏れがない(計算書で突合)
  • 決算整理後試算表と財務諸表のクロスチェック完了
  • 銀行・株主向け説明資料(サマリー、主要KPI、資金繰り表)を準備

まとめ:決算整理は「正確さ」と「透明性」が価値を生む

決算整理は、単なる仕訳作業ではなく、会社の実態を数字で正しく伝えるための最後の仕上げです。ファクタリングや為替、借入といった金融取引も、契約実態に即して誠実に処理すれば、むしろ信用は高まります。カットオフ・引当・評価替え・手数料の期間帰属という基本の4本柱を押さえ、証憑と方針を整えておくことが、銀行や投資家からの信頼につながります。困ったら本記事のチェックリストに立ち返り、迷いがあれば契約書と証憑に立ち戻る——それが決算整理をミスなく進める最短ルートです。

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記事執筆者
中島康彦 (なかじまやすひこ)

■ファクタリング実務・審査の専門家/金融ライター。
大手ファクタリング会社にて2者間・3者間・医療ファクタリングの組成・審査・導入支援を5年間担当。与信設計、債権譲渡禁止特約への実務対応、反社・不当条項チェック、請求書真正性の検証、適正手数料レンジの見立てなど、現場で培った知見をもとに、安全性・適法性・スピードのバランスを取った資金化支援を行ってきました。
現在は金融ライターとして**「ファクタリングナビ」で一次情報に基づく解説・検証記事を執筆。建設・運送・医療・ITを中心に、即日資金化の実務から資金繰り改善の中長期設計まで、経営者が意思決定に使えるコンテンツを目指しています。最新の制度・ガイドライン・判例等**を参照し、誤情報の排除と透明性を重視します。

■実績・取り組み
ファクタリング実務 5年(2者間/3者間/医療)
審査・与信・契約レビュー:数百件規模の案件に関与
手数料の妥当性評価・不当条項チェックの社内指針作成に参画
業界別(建設/運送/医療/IT)での導入支援経験
一次情報重視:制度・法改正の追随/誤情報の是正

■監修・寄稿・登壇
監修:ファクタリングの基礎・実務に関する記事多数
寄稿:中小企業向けメディア/資金調達メディア
登壇:資金繰りウェビナー

業界用語