守秘義務とは？金融業界で絶対に知っておきたい6つのポイントと安心取引のコツ

金融現場でまず知るべき「守秘義務」ガイド：ファクタリング・銀行・為替で失敗しないための実務ポイント

はじめて金融やファクタリングの相談をするとき、「財務データや取引先の情報は外に漏れないの？」と不安になりますよね。この記事では、金融業界で頻出の現場ワード「守秘義務」を、初心者にもわかりやすく整理しました。何が秘密の対象になるのか、例外はあるのか、契約ではどこに注意するのか、実務での声かけや書面の読み方まで、安心して取引できるための必須知識をまとめています。読むだけで、情報管理のリスクを大幅に減らし、相手との信頼を高めるコツがつかめます。

業界ワード（守秘義務）

定義

守秘義務とは、取引や業務で知り得た相手の非公開情報（営業・財務・個人情報・システム・条件など）を、相手の許可なく第三者に開示・漏えいしたり、目的外に利用しない義務を指します。金融業界では、法律（個人情報保護法など）・監督指針・契約（秘密保持契約＝NDA・取引基本契約）・職業倫理の4層で求められる、信頼構築の基本ルールです。例外として、法令に基づく開示要請（裁判所・監督当局等）や、すでに公知の情報などは守秘の対象外となるのが一般的です。

守秘義務の基礎知識：金融の「なぜ」と「どこまで」

対象となる「秘密情報」の範囲

実務上の秘密情報は、次のようなものが典型です。

• 企業情報：財務諸表、資金繰り表、取引先リスト、価格・手数料条件、契約書、商談内容
• 取引情報：債権明細、与信枠、回収状況、担保・保証情報、ファクタリングの手数料率や買戻条件
• 個人情報：担当者名・連絡先、口座情報、本人確認（KYC）書類、マイナンバー（特定個人情報）
• システム情報：API仕様、セキュリティ設定、アクセス権限

通常、契約書上では「口頭・書面・電子データ等を問わず」「秘密表示の有無を問わず」「相手から提供された一切の情報」を秘密に含める包括的な定義が使われます。一方で、以下は秘密から除外されるのが一般的です。

• 提供時点ですでに公知の情報
• 受領者の責によらず公知となった情報
• 受領前から合法的に保有していた情報
• 正当な権限を持つ第三者から合法的に取得した情報
• 秘密情報を用いず独自に開発・取得した情報

守秘義務の法的根拠と金融特有のルール

日本の金融実務では、守秘義務は主に次の仕組みで担保されます。

• 契約法理：取引基本契約や秘密保持契約（NDA）の条項、信義則に基づく付随義務
• 個人情報保護法：個人情報・特定個人情報の適正な取得・利用・第三者提供・安全管理
• 監督指針・ガイドライン：金融庁の監督指針等が求める顧客情報保護、委託先管理、漏えい時対応
• 業法・規程：銀行法・貸金業法等に基づく顧客保護や内部規程（情報遮断＝チャイニーズウォール等）
• AML/CFT：犯罪による収益の移転防止法に基づく本人確認・取引モニタリング・当局報告（守秘の例外）

つまり、「基本は秘密」「ただし法律に基づく開示は例外」「社内でも必要最小限の共有に限定」が原則です。

現場での使い方

言い回し・別称

金融・ファクタリングの現場では、次の言い回しが一般的です。

• 「守秘義務に基づき、頂いた資料は目的以外に使用しません」
• 「秘密保持契約（NDA）を締結した上で、原本をお預かりします」
• 「社内共有は審査チーム内の最小限に限定します」
• 「当局への報告義務に該当する場合を除き、第三者提供は行いません」

関連する別称・近い概念には、秘密保持契約（NDA）、機密保持、情報遮断（チャイニーズウォール）、プライバシー保護、個人情報保護、非開示義務などがあります。

使用例（3つ）

• 与信審査前のメール：
  「本件の審査に先立ち、当社標準の秘密保持契約（相互NDA）の締結をお願いできますでしょうか。ご提供いただく財務情報・取引先情報は本件審査目的に限定して利用いたします。」
• 面談・商談時の口頭確認：
  「頂いた資金繰り表と売掛先明細は審査チームのみで閲覧し、案件終了後は弊社ポリシーに従い安全に破棄します。」
• 社内連絡時の注意喚起：
  「守秘義務により本案件は審査チャンネル外への転送不可。資料は社外共有リンクを禁止、閲覧は期限付きで設定してください。」

使う場面・工程

• 初回相談・資料授受前：秘密保持契約（NDA）の締結、データ授受方法の合意（暗号化・共有範囲）
• 審査・デューデリジェンス：アクセス権限の限定、閲覧ログ管理、マスキング（不要情報の黒塗り）
• 契約締結・実行：契約書の守秘条項の相互化、委託・再委託先への連鎖義務
• モニタリング・回収：目的外利用の禁止の再確認、社内外の情報遮断
• 契約終了・解約：返還・廃棄手続、保管期間・法定保存の整理、漏えい時の報告手順

関連語

• 秘密保持契約（NDA）／相互NDA・片務NDA
• 個人情報・特定個人情報（マイナンバー）・要配慮個人情報
• 情報遮断（チャイニーズウォール）、最小権限、ゼロトラスト
• KYC（本人確認）／CIP、AML/CFT、反社チェック
• 第三者提供、共同利用、再委託、委託先管理
• データマスキング、暗号化、アクセスログ、廃棄証跡

ファクタリング特有の守秘ポイント

2社間・3社間の違いと「通知」

ファクタリングでは、債務者（売掛先）への通知が鍵です。

• 2社間（債務者非通知型）：売掛先には通知しないため、売掛先情報・手数料率・資金繰り状況は高度な秘密情報。審査目的以外での利用・外部開示は厳禁。
• 3社間（債務者通知型）：譲渡通知・承諾が必要。通知自体は手続上の開示だが、手数料率や審査内部情報は依然として秘密。

実務では、二重譲渡チェックや債権譲渡登記の有無など、相手先の信用に関わる情報の扱いも慎重さが求められます。

資料扱いの実務例

• 売掛先名は社内審査グループに限定共有、営業部門への過度な展開は避ける
• 入出金CSV・請求データは不要項目をマスキング、共有リンクはワンタイム・期限付
• クラウドストレージは二要素認証、メール添付はパスワード別送（可能ならゼロトラスト基盤へ）
• 案件終了時は返却／削除証跡を残す（削除ログ・廃棄証明）

銀行・貸金・為替業務の守秘の勘所

銀行・貸金

顧客情報は契約や信義則、個人情報保護法、監督指針で保護されます。社内では情報遮断（チャイニーズウォール）を設け、融資審査と営業の過度な情報連携を制限。信用情報機関への照会・登録は法令・規約に基づき、本人同意・目的明確化が原則です。

為替（送金・外為）

為替はAML/CFTの観点でのモニタリング・当局照会が生じやすい領域です。守秘義務は原則ですが、法令に基づく報告・照会への対応は例外として許容されます。その際の社内共有は必要最小限に抑え、ログを残し、顧客への説明は法令と社内方針に沿って統一します。

NDA（秘密保持契約）で最低限おさえる条項

書面の読み合わせで、次の点を確認すると実務リスクを大幅に減らせます。

• 秘密情報の定義：媒体不問か、口頭情報の扱い、秘密表示の要否
• 目的・範囲：審査目的・業務遂行目的に限定、目的外利用の禁止
• 第三者提供：グループ会社・専門アドバイザー・委託先への提供条件、連鎖義務
• 安全管理：アクセス権限、暗号化、持出し制限、漏えい時の通知義務・初動
• 返還・廃棄：契約終了時の返還／完全削除・廃棄証跡、バックアップの扱い
• 除外情報：公知情報・独自開発情報等の明確化
• 存続期間：通常は開示終了後●年（例：3〜5年）など、実態に合わせる
• 準拠法・裁判管轄：国内取引は日本法・合意管轄で整合を図る
• 損害賠償・違約金：過大なペナルティは交渉余地。実損ベース＋合理的な上限を検討

双方向で情報を出し合う場合は「相互NDA」、片方だけが情報を出す場合は「片務NDA」を選びます。ファクタリングでは審査・回収・契約の各工程で情報の流れが変わるため、社内外の委託先（与信スコアリング、債権管理等）まで視野に入れた設計が重要です。

守秘義務と法令上の例外（よくある質問）

例外1：法令・当局対応

裁判所の命令、監督当局・警察からの適法な照会、税務当局の手続、犯罪収益移転防止法に基づく報告等は、守秘義務の例外として開示が許容されます。開示範囲は必要最小限に限定し、記録を残します。

例外2：共同利用・委託

グループ内の共同利用や外部委託は、契約・通知・安全管理措置が前提。再委託の可否、越境移転（海外サーバ等）の有無を契約とプライバシーポリシーで明確にします。

例外3：公知情報・本人同意

すでに公知の情報や、本人の明確な同意がある場合は守秘義務違反とはなりません。ただし、同意は具体的かつ検証可能な形で取得・保管することが肝心です。

漏えいを防ぐための実務チェックリスト

• 資料授受前にNDA締結／取引基本契約の守秘条項を確認
• 共有は「必要最小限のメンバー」と「目的限定」
• ファイルは暗号化、リンクは期限・回数制限、二要素認証
• 不要項目は受領前にマスキング（売掛先や個人情報の最小化）
• 閲覧・ダウンロードのログ取得、持出しデバイスの制御（DLP）
• クラウドは国内リージョン・データ所在を確認、アクセス権は定期棚卸し
• 委託先と守秘・安全管理・再委託条項を連鎖、監査権を確保
• 漏えい時の初動手順（封じ込め→原因究明→当局・本人連絡）を訓練
• 案件終了後の返還・廃棄・削除証跡を残す

よくある誤解と落とし穴

• 「秘密表示がなければ守らなくてよい」：契約次第で表示不要のケース多数。口頭情報も議事録化で秘密扱いに。
• 「社内だから自由に共有してよい」：目的外利用はNG。部門間の情報遮断を徹底。
• 「2社間ファクタリングは誰にも知られない」：審査・リスク管理上の必要な範囲では社内共有・委託先共有が発生。範囲管理が要点。
• 「古いバックアップは関係ない」：バックアップ媒体からの漏えいは典型事故。削除ポリシー・暗号化が必須。

トラブル事例と予防策

事例1：営業資料への転用

審査で取得した価格条件を、別案件の提案に引用して相手先に推測されてしまった。対策は「目的外利用を明確に禁止」「データ分類と再利用ルール化」「営業・審査の情報遮断」。

事例2：委託先からの漏えい

スコアリング委託先の再委託で管理が甘く、サンプルデータが流出。対策は「再委託の事前承認」「第三者移転時の暗号化・匿名化」「監査権・報告義務の契約化」。

事例3：法令対応の説明不足

疑わしい取引の当局報告後、顧客への説明が不統一でクレーム化。対策は「法令上の守秘例外を事前に通知」「社内FAQ・テンプレ整備」「記録管理の徹底」。

初心者向けQ&A

Q. NDAは必ず必要？メール合意でも大丈夫？

A. 重要情報を扱うならNDAが推奨です。軽微な案件でも、少なくとも「守秘方針・目的限定・第三者提供なし」を書面（メールでも可）で相互確認しましょう。

Q. 期間はどのくらいが妥当？

A. 一般には開示終了後3〜5年が多いです。技術情報や顧客名簿など価値が長期に及ぶ場合は延長を検討します。

Q. 守秘義務違反の責任は？

A. 損害賠償や差止めが典型です。違約金条項を設ける場合は、過度な金額設定が無効・紛争リスクになることもあるため、実務相場や取引規模に応じて協議します。

明日から使えるテンプレ表現集

• 「本メール・添付に含まれる情報は守秘対象です。審査目的以外への転用・第三者共有はご遠慮ください。」
• 「委託先へ提供する場合は、貴社の事前承諾と守秘義務の連鎖を徹底します。」
• 「法令に基づく開示を求められた際は、可能な範囲で速やかに通知します。」
• 「案件終了後は、返還または安全な方法で削除・廃棄します。」

まとめ：守秘義務は「信頼を見える化」するルール

金融・ファクタリング・為替の取引は、機微情報のやりとりが前提です。守秘義務は、単に漏えいを防ぐだけでなく、「情報は目的にだけ使い、必要最小限で共有し、終わったら適切に消す」という信頼の作法を見える化する仕組みです。NDAと社内ルールを整え、委託先まで含めた安全管理を運用すれば、情報リスクは大きく下がります。不安があれば、まずはNDAのドラフトと情報提供の範囲・目的をすり合わせるところから始めましょう。結果として、審査はスムーズになり、条件交渉も前向きに進みます。

本記事は一般的な解説です。具体的な契約・運用は実情と法令に合わせて確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。守秘義務を味方につけ、安心・公正な取引を実現しましょう。