誓約確認とは？意味・金融業界での具体例と注意点を専門家が徹底解説

誓約確認の基礎知識：意味・使い方・ファクタリングでの実務チェックをやさしく解説

「誓約確認って何を確認するの？」「契約前にどこまで見れば安全？」——ファクタリングや融資、為替・送金に関わる現場では、こうした疑問がよく出てきます。誓約確認は、相手方が約束した内容（誓約）や事実（表明）が正しいか、そしてそれを守っているかを確かめる基本動作。ですが、文書の形式や確認の深さ、タイミングを間違えると、二重譲渡や債権回収不能、コンプライアンス事故のリスクが高まります。本記事では、初心者でもすぐに現場で使えるように、誓約確認の意味、言い回し、実務フロー、チェック項目、注意点まで具体的に整理します。

業界ワード（誓約確認）

定義

誓約確認とは、取引相手が契約上約束した事項（誓約・コベナンツ）や、契約時に真実であると断定した事実（表明）について、文書の取得・記載内容の精査・裏付け資料の突合・定期的な再確認を通じて妥当性と遵守状況を確認する行為、またはそのプロセスを指します。ファクタリングでは「譲渡債権の存在」「二重譲渡がないこと」「反社会的勢力でないこと」等の誓約の確認が中心になり、銀行融資では財務コベナンツの達成状況や否定的誓約（禁止事項）の遵守確認が主眼になります。為替・送金分野では、制裁・マネロン関連の遵守や取引の実体に関する誓約の確認が重視されます。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のような言い方がよく使われます。

• 誓約確認、誓約事項確認、コベナンツ確認
• 表明保証の確認、R&W（Representations & Warranties）確認
• 遵守証明書（コンプライアンス・サーティフィケート）の受領・チェック
• 反社誓約の確認、適正取引誓約の確認

使用例（3つ）

• 「譲渡人の誓約確認は完了していますか？二重譲渡なしの記載と登記・承諾書の突合までお願いします。」
• 「四半期の遵守証明書で財務コベナンツをテストし、関連当事者取引の誓約も追加確認しましょう。」
• 「海外送金は制裁関連の誓約確認が未了なので、受取人・用途の再申告を依頼してください。」

使う場面・工程

誓約確認は単発のチェックではなく、ライフサイクル全体で繰り返します。

• 取引開始前（オンボーディング）：KYC/CDD、反社誓約書の取得、表明保証条項の起案・合意
• 契約締結時（クロージング）：誓約書・遵守証明書の受領、添付資料突合、必要な承諾・登記の完了確認
• 実行時（資金化・送金前）：最終チェックリストでブリッジ確認（例：入金口座・債権リストの最新化）
• 期中モニタリング：四半期・年次の遵守証明書、財務情報の取得、イベントドリブン確認
• 違反・懸念発生時：是正計画の受領、追加誓約の取得、必要に応じて契約条項の発動

関連語

• コベナンツ（誓約）、表明保証（Representations & Warranties）、遵守証明書（Compliance Certificate）
• KYC/CDD、反社チェック、制裁・AML/CFT
• 債権譲渡通知・承諾、債権譲渡登記、二重譲渡、譲渡制限特約
• 期限の利益喪失、イベント・オブ・デフォルト（EoD）、是正措置

ファクタリングでの誓約確認：チェック項目と実務フロー

典型的な誓約項目（例）

ファクタリングでは、以下の誓約確認がリスクコントロールの核心です。重要度と裏付け手段をセットで意識すると精度が上がります。

• 債権の存在・帰属：請求書・検収書・発注書・取引基本契約の突合、入金実績の照合
• 二重譲渡・担保設定の不存在：譲渡リストの唯一性誓約、債権譲渡登記や債権譲渡承諾書で補強
• 対抗要件の確保：3社間は通知・承諾書、2社間は登記など客観的手段を確認
• 譲渡制限特約の扱い：原契約の条項確認、必要に応じて相手先承諾の取得
• 相殺・苦情・瑕疵の不存在：クレーム・返品・値引き予定がない旨の誓約と現場ヒアリング
• 反社条項：当事者および実質的支配者を対象にした反社会的勢力排除の誓約
• 資金使途・不正防止：犯罪収益・制裁違反等に該当しない旨の誓約
• 情報の正確性：提供資料が真実・正確・完全である旨の表明保証
• 継続報告：重大事象（倒産手続、差押、取引停止等）が生じた場合の速やかな通知

実務フロー（2社間・3社間の違い）

2社間ファクタリングは相手先（債務者）に通知しない前提が多いため、誓約確認と裏付けの精度がより重要になります。3社間は相手先の承諾で補強でき、二重譲渡リスクの抑制効果が高まります。

• 2社間の流れ
  • 与信・KYC→誓約書取得→請求書・検収書の突合→譲渡登記→最終チェック→実行
  • 期中は入金トレースと定期誓約更新（反社・重大事象報告）を運用
• 3社間の流れ
  • 与信・KYC→誓約書→債務者への通知・承諾→最終チェック→実行
  • 期中は承諾範囲の追加、債権リストの更新と照合、入金先固定の徹底

必要書類の例

• 誓約書（反社条項、二重譲渡なし、情報の正確性、報告義務等）
• 表明保証条項（契約本文）と遵守証明書（必要に応じて四半期等）
• 債権譲渡通知書・承諾書（3社間）／債権譲渡登記完了情報（2社間）
• 請求書、検収書、発注書、基本契約、過去入金のエビデンス
• 反社チェック結果（取引先・実質支配者・役員等）
• 入金口座証明（譲渡対価・回収金の受領口座の一致確認）

銀行融資・貸金業での誓約確認

財務コベナンツと遵守証明書

融資では、債務者が一定の財務指標（例：自己資本比率、DSCR、EBITDA、ネット有利子負債倍率など）を維持する誓約を置くことが一般的です。借り手は決算や四半期ごとに遵守証明書（Compliance Certificate）を提出し、金融機関は試算表・監査報告等と突合して達成状況を確認します。証明書は算式・定義を明確にし、例外・調整の記載欄を設けると誤解が減ります。

事業コベナンツ：肯定的・否定的誓約

肯定的誓約は「こうする」という義務（例：重要事項の報告、保険付保、許認可維持）。否定的誓約は「しない」という義務（例：無担保債務の過度な増加、資産の重要売却、担保提供の制限、配当制限等）。誓約確認は、役員会議事録、登記簿、投融資稟議、担保台帳などの裏付けで行います。

違反時の対応

誓約違反（ブリーチ）が生じた場合は、是正期間の付与、追加担保、レバナント（緩和）や財務定義の修正、利率マージンの調整等でリメディーすることがあります。即時の期限の利益喪失を発動するかは、重大性、再発防止策、コミュニケーション次第です。いずれにせよ、違反の事実・影響・是正計画を文書で取り交わし、記録を残すことが重要です。

為替・送金実務での誓約確認

クロスボーダー送金や外貨建取引では、制裁・マネロン・貿易管理の観点から誓約確認が必須です。現場では、受取人・用途・原資・関係者の誓約と、請求書や契約書、インボイス、船荷証券などの実体資料を突合します。

典型的な誓約（例）

• 取引が国際制裁や取引規制（デュアルユース等）に違反しないこと
• 資金がテロ資金供与・マネロンに利用されないこと
• 受取人・最終受益者・貨物の最終仕向地が制裁対象でないこと
• インボイス・契約の内容が真実であること

注意点

• スクリーニングのヒットは誓約確認で補強し、必要に応じて追加資料を依頼
• 目的や当事者が頻繁に変わる場合はリスク再評価（EDD）を検討
• 現地規制・相手金融機関の要件により、誓約の範囲・文言が変わる点に留意

よくある誤解と注意点

• 誓約書だけでリスクは消えない：文書は約束の証拠にすぎません。第三者の承諾、登記、資金フローの固定など「客観的対抗手段」で補強を。
• 定期的な再確認が必要：一度の確認で終わりにせず、期中モニタリングとイベント発生時の臨時確認をセットで運用。
• 文言の曖昧さは実務事故の元：「二重譲渡なし」「相殺なし」「クレームなし」は適用範囲（譲渡対象・期間・相手先）を具体化。
• 誓約違反の扱いを事前に合意：是正期間、情報提供義務、緩和の条件、違反継続時の措置を契約に明記。
• 実務と整合する運用設計：現場が運用不能な誓約は形骸化します。システムや帳票、締日の運用と合う設計に。

誓約確認のチェックリスト（現場向け簡易版）

事前（オンボーディング）

• 反社誓約・KYC資料の取得と整合確認
• 表明保証・誓約条項の草案レビュー（範囲・定義・報告義務）
• 必要な承諾・登記の要否判断とスケジュール化

実行前（クロージング）

• 誓約書の原本受領（署名・押印・日付・差し替え痕の確認）
• 裏付け資料の突合（契約・請求・検収・入金実績・登記・承諾）
• 資金受領口座・回収口座の固定（通知・インストラクション）

期中（モニタリング）

• 遵守証明書の周期・算式・資料の明確化と回収
• 重大事象・苦情・オフバランスの発生有無の確認
• 疑義時の追加誓約・是正計画の取得、記録の保存

テンプレート例の書き方ヒント（参考）

以下は文言の考え方のヒントです。正式な契約文は弁護士等の専門家にご確認ください。

• 二重譲渡なし：譲渡対象債権の範囲を特定し、「譲渡・譲渡担保・質権設定・譲渡予約等を行っていない」まで含める。
• 債権の存在：発生原因、対価の履行状況（検収済み等）、弁済期、異議の不存在を列記。
• 相殺なし：弁済期到来前の見込相殺や将来債権との相殺予定も否定するかを明確に。
• 反社排除：当事者・役員・実質支配者の範囲、違反時の解除・損害賠償・通報等の取扱い。
• 報告義務：重大事象の定義（差押・仮処分・資金繰り悪化・信用不安情報等）と報告期限。
• 遵守証明書：提出頻度、指標の定義、算式、資料添付、虚偽時の効果。

用語辞典：関連キーワードの要点整理

コベナンツ（Covenant）

契約当事者が将来に向けて守るべき約束。財務・事業・報告など多岐にわたり、違反時の措置が契約に規定されます。

表明保証（Representations & Warranties）

契約時点の事実に関する断定（表明）と、その内容が真実であることの保証。虚偽の場合は損害賠償や解除等の効果が生じます。

遵守証明書（Compliance Certificate）

借り手等が一定の周期で、コベナンツを満たしていることを自ら証明する文書。添付資料や算式の透明性が重要です。

債権譲渡登記

2社間ファクタリング等で対抗要件を確保し、二重譲渡リスクを抑えるために用いられる公的な記録。通知・承諾と併用されることもあります。

よくある質問（FAQ）

Q. 誓約確認はどの程度まで裏付け資料が必要ですか？

A. 重要度とコストのバランスで決めます。高額債権や新規先、2社間スキームでは、契約・請求・検収・入金実績・登記/承諾までのフルセットが望ましく、既存先・少額ではサンプリングや定期誓約で補うなど、リスクベースで運用します。

Q. 誓約違反が見つかったら即時に契約解除すべきですか？

A. 重大性や故意性、是正可能性で判断します。是正期間の付与や追加担保、指標の一時緩和などの手当も選択肢です。漫然と見逃すのではなく、記録と合意文書を残すことが肝心です。

Q. 英語での「誓約確認」は何と表現しますか？

A. 一般に「Covenant confirmation」または「Confirmation of representations and warranties」と表現します。定期報告は「Compliance certificate」と呼ばれます。

まとめ：誓約確認は「文言×裏付け×継続運用」

誓約確認は、単なる書類収集ではなく「文言の明確化」「客観的な裏付け」「期中の継続運用」の三点セットで初めて効果を発揮します。ファクタリングでは二重譲渡・相殺・反社の三大リスクを、融資では財務・事業コベナンツを、為替では制裁・AMLをそれぞれ中心に据え、取引の性質に合わせて深度を調整しましょう。今日から使えるチェックリストや言い回しを活用し、現場の「抜け・漏れ・勘違い」を減らすことが、結果的に損失とトラブルの回避につながります。必要に応じて専門家の助言も取り入れながら、実務に合った誓約確認の型をチームで磨いていきましょう。

この記事の監修者

平松 樹 （ひらまつ いつき）

資金調達アドバイザー／元メガバンク法人営業・審査担当

金融実務20年以上。メガバンクで法人融資・審査・再生支援を担当後、独立。中小企業の資金繰り改善に特化し、請求書買取（ファクタリング）・ABL・リスケ・補助金活用まで一気通貫で支援。建設・運送・IT・医療など500社超の案件を伴走し、累計支援額は数十億円規模。入金サイト長期化や赤字決算・債務超過局面でも、債権譲渡禁止特約や民法改正（債権法）への実務対応、与信・反社/不当条項チェック、適正手数料レンジの見立てまで具体策を提示。安全性・適法性・スピードのバランスを重視し、「即日資金化」と「継続的な資金繰り安定」の両立を設計するのが強み。

所属：ファクタリングナビ