振込再送とは？失敗しない手順とトラブル回避のポイントを徹底解説

「振込再送」をやさしく解説—意味・現場での使い方・ミスを防ぐ実務ポイント

「振込再送って、もう一回送金するだけの話じゃないの？」と感じた方へ。実はこの言葉、ファクタリング・銀行・貸金業・為替オペレーションの現場で微妙に違う意味合いで使われ、対応を誤ると二重送金や資金トレースの遅延といった大きなトラブルにつながることがあります。本記事では、初心者の方にもわかりやすく「振込再送」の正しい理解と、現場での安全な使い方、実務のチェックポイントを丁寧に解説します。読了後には、「どの状況で何をすべきか」が具体的に判断できるようになります。

業界ワード（振込再送）

定義

振込再送とは、最初の送金に不具合や行方不明（未着・遅延）が生じた場合に、同一または修正済みの条件で「振込をやり直す」こと、または銀行間ネットワーク上で送金メッセージを再発信・再処理することを指します。現場では大きく2つの使われ方があります。1) 実務側（経理・オペレーション）が同じ金額・受取人へ改めて新たな振込を起案・実行する意味（再実行）。2) 銀行のオペレーションで、ネットワーク（例：全銀システム）のメッセージを技術的に再送（再発信）する意味。日常会話では1)の意味で使われることが多い一方、銀行実務では2)を指す場面もあるため、誤解防止のために文脈を明確にすることが重要です。

現場での使い方

振込再送は、言い回しによってニュアンスが異なります。誤解を避けるため、以下の観点で覚えておくと安全です。

言い回し・別称

現場では次のような言い回しが使われます。

• 再振込（さいふりこみ）：新たに振込をやり直すこと（同額・同受取人が多い）。
• 再実行：既存の振込指図を同条件で再度実行すること（システム用語寄り）。
• リセンド（resend）：英語由来。メールやチャットでの略称。
• 再発信：銀行・ネットワーク側でのメッセージ再送（技術的対応）。
• 再手配：業務全体として振込を組み直す表現（期日や経路含む）。

使用例（3つ）

• 「受取口座名義の相違でエラーになったため、名義修正のうえ振込再送をお願いします。」
• 「着金確認が取れないので、まずはトレース（照会）し、未着確定なら再送対応で。」
• 「ファクタリングの買取代金、午後のカットオフ過ぎたので翌営業日に再送手配します。」

使う場面・工程

再送は、以下の工程で発生します。

• 入力前後：受取人情報の誤りやフォーマット不備でエラーになり、再入力して再送。
• 送金後：受取人へ未着、遅延、口座閉鎖等が判明し、情報修正または新規振込で再送。
• ネットワーク／銀行内：通信障害・メッセージ不達時に銀行側が再発信（利用者は依頼のみ）。

関連語

• 組戻し：送金後に取り消し・資金回収を依頼する手続。手数料や受取人同意が必要なケースあり。
• 資金返戻／差戻し：銀行処理で成立せず、発信元へ資金が戻る現象。
• 照会（トレース）：送金状況の追跡依頼。「再送」前に原則実施。
• モアタイムシステム：時間外でも即時入金可能な全銀の仕組み。参加状況や上限に留意。

なぜ「再送」が必要になるのか（典型要因）

再送は多くが事前チェックで防げます。代表的な要因は次のとおりです。

• 口座情報の誤り：支店番号・口座番号・受取人名義の相違、全角半角や旧字体の違い。
• 受取口座の状態：休眠、解約、入金停止、名義変更未反映。
• 時間要因：カットオフ超過、夜間・休日での処理遅延、銀行の保守時間。
• ネットワーク障害：全銀システムや個別銀行の一時障害。
• 制限・規制：取引モニタリング（AML/CFT）による一時保留、取引目的の確認不足。
• 金額・通貨条件：上限超過、手数料控除誤認（海外送金）、ベンフォード異常検知による保留。

再送の前に必ず確認すること（チェックリスト）

「再送」が二重送金を生む最大要因は、未着の原因を確認しないまま実行してしまうことです。以下を必ず順に確認しましょう。

• 送金ステータスの確認：自社のネットバンキングや振込管理システムで「受付」「処理済」「エラー」「資金返戻」などの最新状態をチェック。
• 着金確認の取得：受取人側の入出金明細確認を依頼（スクリーンショットは時刻・残高併記で）。
• 銀行への照会（トレース）：未着で原因不明の場合、発信銀行にトレース依頼。ネットワーク内の滞留や受取銀行での名寄せ保留が判明することも。
• 口座情報の再検証：通帳・キャッシュカード・公式情報で名義表記を厳密に一致させる（株式会社/（株）などの表記ゆれ対策）。
• 時刻とカットオフ：当日扱い／翌営業日扱いの見極め。モアタイム参加可否と保守時間の確認。
• コンプライアンス事項：受取人の実在性、取引目的、反社・制裁対象チェックに未了がないか。

正しい手順：国内振込の再送フロー

国内の標準的な再送フローは次の通りです。社内規程・利用銀行のルールがある場合はそちらを優先してください。

• 1. 原因の一次切り分け：社内明細で処理状況、受取人の未着報告、入力情報を確認。
• 2. 銀行に照会：未着のまま原因不明なら、トレースを依頼。ケースによっては銀行側が「再発信」対応。
• 3. 情報不備の是正：名義・支店・口座番号などを修正。受取人から正式情報（例：口座振替依頼書の控え）を再取得。
• 4. 再送の判断：資金が返戻予定／エラー確定なら「再振込」を検討。ステータスが「処理中」なら原則再送せず経過観察。
• 5. 実行と記録：再送実行後、原振込との関連を台帳に明示（参照番号の相互記載）。二重送金監視ルールに従い突合。
• 6. 受取側フォロー：着金確認の取得。誤差・不足があれば速やかに追加送金や返金依頼を手配。

重要：一度発信した振込は、即時決済やモアタイム対象の場合、取消できないことが多く、取り消しは「組戻し」扱いとなります。組戻しは手数料が発生し、受取人の同意が必要となる場合があります。再送の前に、原振込の行方をできる限り確定させましょう。

ファクタリング業務での「振込再送」注意点

ファクタリングでは、買取代金の支払い遅延は信用問題に直結します。以下の観点でミスを予防してください。

• 与信・名寄せ：請求書名義と口座名義が一致しない案件は、与信時点で是正。屋号口座・代表者口座の取扱基準を明確化。
• スケジュール管理：カットオフ前後の案件は優先順位を設定し、モアタイム対応可否（銀行・金額上限）を案件別に把握。
• 振込名義の統一：依頼人名義が社名規程と一致しているか。受取側の自動消込ロジックに影響。
• 二重送金ガード：原振込の参照IDで照合、同額同口座の24時間重複チェックをシステム化。
• コンプライアンス：再送が多発する先は、なりすまし・口座貸しの兆候も。CDD（顧客管理）を見直し、取引継続可否を検討。
• 会計処理：返戻時は仮受金／未払金の適切な仕訳、再送時は参照番号でひも付け。監査対応のエビデンスを保存。

トラブル対処Q&A

Q1. 受取人から「まだ入っていない」と連絡。すぐ再送していい？

A. 原則NG。まずは自社のステータス確認と銀行トレースを実施。即時決済やモアタイム対象なら、受取銀行の入金反映遅延や名義不整合の保留が原因のこともあります。原因確定後に再送判断を。

Q2. 名義が1文字違い。再送すべき？

A. 多くの銀行は厳密一致を要請します。正式表記（法人種別やスペース含む）を受取人に確認し、正しい名義で再送。原振込が保留・返戻になる可能性があるため、重複を避けるためのタイミング管理が重要です。

Q3. 二重送金してしまった場合の対応は？

A. 速やかに受取人へ連絡し、銀行経由で返金手続きを依頼。誤入金の返金は受取人の同意が必要な場合があります。社内では再発防止策（承認フロー強化、重複検知）を即時導入してください。

Q4. 夜間・休日で再送したが入らない

A. モアタイム非参加行やメンテナンス時間帯は入金が翌営業日扱いになります。銀行の稼働時間・制限を事前に確認しましょう。

Q5. 海外送金での「再送」は？

A. 海外はSWIFT経由の追跡（トレース）、着金銀行での審査保留、手数料控除など論点が増えます。新規送金での再送は二重送金リスクが高いので、まずはトレースと修正指図（修正メッセージ）を検討します。

二重送金を避けるための仕組みづくり

• 承認ワークフロー：再送は通常振込より1段階重い承認を設定。
• 重複検知ルール：同額・同口座・24時間以内の再送は警告表示。参照番号の強制入力。
• 名寄せ辞書：よくある表記ゆれ（カ）/（カブ）/株式会社の吸収、半角・全角の正規化。
• テンプレート固定化：受取人マスタを承認制にして都度入力を禁止。
• 運用ログ：再送理由、照会番号、担当者、時刻を必須記録。監査と教育に再活用。

英語・メール文例（社内・銀行・取引先）

社内（日本語）

件名：〇〇様分 振込未着の件（照会依頼）
本文：本日10:15発信の当社振込（参照ID：12345）が受取側で未着の報告。まず銀行へトレース依頼します。結果判明後、再送可否を判断します。二重送金防止のため、本件の再振込は私の承認が出るまで保留でお願いします。

銀行宛（日本語）

件名：振込照会依頼（未着）
本文：下記振込の着金状況をご確認ください。必要に応じて再発信をご対応いただけますと幸いです。受取人名義表記相違の可能性あり。参照：発信日時、金額、受取銀行・支店、口座番号、依頼人名義。

取引先（英語）

Subject: Payment Status Update
We have initiated a trace with our bank regarding your payment. To avoid duplicate transfers, we will not re-send until we receive a formal status. We appreciate your patience and will update you promptly.

関連用語の整理（初心者向けミニ辞典）

• 着金：受取口座へ入金が反映されること。
• 返戻（へんれい）：何らかの理由で資金が発信元へ戻ること。
• カットオフ：当日扱いで処理するための受付締切時刻。
• 照会（トレース）：銀行に対し、送金の経路・状態を確認する依頼。
• 組戻し：発信済みの振込を取り消して資金回収を試みる手続。
• 再発信：銀行・ネットワーク側がメッセージを再送信する技術対応。
• モアタイムシステム：時間外でも即時入金を可能にする仕組み（銀行・金額により非対応あり）。

ケーススタディ：ファクタリングでの再送判断

状況：午前中に買取代金を送金。先方から14時時点で未着連絡。社内システムは「処理済」。

• 1) 先方へ入出金明細の時刻付きスクリーンショット提出を依頼。
• 2) 発信銀行へトレース依頼。「受取銀行で名義不一致のため保留」の返答。
• 3) 受取人に正式名義（登記通り）を確認。再度、銀行に名義照合の可否と返戻見込みを確認。
• 4) 返戻確定の連絡後、正しい名義で再送。着金確認を取得し、原振込との関連を台帳更新。

ポイント：原因確定前に再送していれば二重送金の恐れがありました。トレースを挟むことが最重要です。

費用・時間の目安と注意

再送そのものは通常の振込手数料が発生し、組戻しや照会には銀行所定の手数料がかかる場合があります。時間は即時～翌営業日が目安ですが、ネットワーク障害や名義不一致の是正待ち、コンプライアンス審査保留時はさらに延びることがあります。緊急性の高い支払いは、カットオフ前の早い時間帯に実行し、必ず受取人の口座情報を事前検証しましょう。

よくあるミスと防止策

• 未着＝未処理だと思い込み再送：トレース必須、ダッシュボードでリアルタイム状態を共有。
• 名義表記の略称使用：登記・通帳の正式表記に合わせる（株式会社/合同会社、スペース、記号）。
• 夜間の即時着金前提：モアタイムの非対応行・メンテ時間を一覧化。
• 社内連絡の遅れ：再送はチャットではなくチケット／ワークフローで可視化。

まとめ：安全な「振込再送」の黄金ルール

• 1. 「再送」の前に「照会（トレース）」を行う。
• 2. 名義・口座情報を正式資料で再確認する。
• 3. 二重送金を防ぐ承認フローと重複検知を必ず入れる。
• 4. カットオフとモアタイムの可否を案件ごとに把握する。
• 5. すべての判断・連絡・参照番号を記録に残す。

「振込再送」は、単なる「もう一回送る」ではありません。原因を確かめ、適切な手順で進めることで、二重送金や信用失墜といった大きなリスクを避けられます。本記事のチェックリストとフローをチームで共有し、今日から安全な送金運用を実現してください。

この記事の監修者

平松 樹 （ひらまつ いつき）

資金調達アドバイザー／元メガバンク法人営業・審査担当

金融実務20年以上。メガバンクで法人融資・審査・再生支援を担当後、独立。中小企業の資金繰り改善に特化し、請求書買取（ファクタリング）・ABL・リスケ・補助金活用まで一気通貫で支援。建設・運送・IT・医療など500社超の案件を伴走し、累計支援額は数十億円規模。入金サイト長期化や赤字決算・債務超過局面でも、債権譲渡禁止特約や民法改正（債権法）への実務対応、与信・反社/不当条項チェック、適正手数料レンジの見立てまで具体策を提示。安全性・適法性・スピードのバランスを重視し、「即日資金化」と「継続的な資金繰り安定」の両立を設計するのが強み。

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