案件再審とは？金融業界での意味・審査基準・審査通過率を徹底解説

案件再審の意味と実務対応がひと目でわかるガイド：ファクタリング・与信の「もう一度審査」を乗り切るポイント

「案件再審と言われたけど、結局どういう状態？否決ってこと？」——金融の専門用語は、初めて聞くと不安になりますよね。この記事では、ファクタリングや銀行与信の現場で頻出する「案件再審」を、初心者の方にもわかりやすく整理。なぜ再審になるのか、どこを見られるのか、通過のために何を整えるべきかまで、実務で役立つ観点から解説します。読み終えるころには、「どう動けばいいか」が具体的にイメージできるはずです。

業界ワード（案件再審）

定義

案件再審とは、いったん審査を終えた（あるいは審査進行中の）申込案件について、追加情報の入手・条件変更・リスク評価の見直しなどを理由に、審査機関（ファクタリング会社、銀行、貸金業者など）が「もう一度審査プロセスに戻して再評価すること」を指します。初回審査結果の取り消しを必ず意味するわけではありません。新しい材料を加味して結論（可否・条件・金額・手数料等）をアップデートする工程です。なお「再申込（いったん否決や辞退後の新規申込）」や「差し戻し（不備修正のための事務的戻し）」と異なり、再審は内部の与信判断を再び走らせる点が特徴です。

現場での使い方

言い回し・別称

実務では、以下のような言い回しが使われます。ニュアンスの差を理解しておくと対応がスムーズです。

• 再審／案件再審：標準的な言い方。再度、審査フローに戻ること。
• 再与信／再査定：与信枠や条件の見直しが主眼のときに用いられがち。
• 二次審査／セカンドレビュー：初回審査後に別階層の審査部門が確認する趣旨。
• 再稟議：社内稟議（承認）フローをもう一度起案すること。
• 差し戻し：不備対応の意味合いが強く、再審とは必ずしも同義ではない。

使用例（3つ）

• 「売掛先の支払いサイトが延びたため、与信影響を踏まえて案件再審に回します。」
• 「決算書が確定版に差し替わりましたので、条件を再査定（再審）いたします。」
• 「社内モデルをアップデートした関係で、継続案件を一括で再審しています。」

使う場面・工程

案件再審は、主に次のようなタイミングで発生します。

• 初回審査後に条件変更（例：買取率、手数料、支払サイト、枠の増減）が生じたとき
• 追加資料の提出により財務・商流・与信情報が更新されたとき
• 売掛先（ファクタリングの債務者）に遅延・事故・信用変動が発生したとき
• 社内ルールやスコアリングモデルが改定されたとき
• 稟議の期限切れ（一定期間経過で再承認が必要）に該当したとき
• 名義変更、代表者変更、主要取引先の入れ替え等の属性変動があったとき

関連語

• 一次審査：書面やスコアリング中心の初期判定
• 本審査：詳細資料・ヒアリングまで踏み込む最終判断工程
• 与信／信用枠：取引可能な上限額や条件
• 稟議：社内承認プロセス
• 留保：最終判断を保留して追加情報を待つ状態
• 否決（引受不可）：審査で受けられない結論
• 再申込：案件をいったん終了し、期間を置いてからの新規申込
• 増額審査：枠や金額の上積みを目的とした再評価

なぜ案件再審が発生するのか（背景とトリガー）

金融は「情報産業」と言われるほど、最新情報の反映が命です。特にファクタリング・与信の現場では、次のようなトリガーで再審が起こります。

• 新情報の出現：確定決算の入手、商流の変更、追加契約書の提示など
• 売掛先リスクの変動（ファクタリング）：支払遅延・格付変化・ニュースリスク
• 取引条件の変更：買取率、手数料、支払サイトの延伸、回収方法の変更
• 社内モデル／ルールの改定：スコアリング閾値の調整、業種ポリシーの更新
• 時間経過による陳腐化：稟議の有効期限切れ、四半期・半期のクロージング
• コンプライアンス要件：反社チェックの再実施、法令・監督指針の改定
• 取引先の再編：合併、事業譲渡、主要仕入先の変更によるキャッシュフロー変化

再審の評価ポイント（ファクタリング・銀行共通の見方）

申込企業側のポイント

• 資金繰りの実態：資金ショートの原因と対策、資金繰り表の整合性
• 財務の安定性：売上・粗利の継続性、在庫回転、債務償還力
• 納税・社会保険の状況：未納・分納の有無、計画性
• 取引の妥当性：単発大口依存のリスク、継続性、取引条件の妥当性
• ガバナンス：代表者変更や役員構成の変化、内部管理体制

売掛先（ファクタリング）側のポイント

• 支払い実績：遅延の有無、支払サイトの遵守状況
• 信用力：外部情報、業界動向、契約安定性
• 請求の正当性：注文書・納品書・検収書・請求書の整合性（3点/4点照合）
• 債権の帰属と譲渡性：譲渡禁止特約の有無、相殺条項、瑕疵リスク

取引条件・書類整合性

• 契約条件の一貫性：基本契約、個別契約、見積・発注・検収の整合
• 変更履歴：条件変更のプロセスが書面で追えるか
• 入金フロー：回収口座、受取人、振込名義の透明性

再審プロセスの流れと所要時間の目安

所要時間は案件の複雑性や社内体制で大きく変わりますが、一般的には「情報が揃っていて変更点が限定的」な場合は短時間で結論が出やすく、条件変更や売掛先リスクの再評価が必要な場合は数営業日程度を見込むケースが多いです。典型的な流れは次のとおりです。

• トリガー発生（条件変更、資料差し替え、期限切れ 等）
• 追加資料の収集・ヒアリング（不明点の洗い出し）
• スコアリング・定量評価の更新（定性要素の加点/減点）
• 社内レビュー（担当→審査部→稟議ライン）
• 結論（可否・条件提示・留保）と通知

「急ぎ」の場合は、先に重要論点を絞って中間条件（仮条件）を出し、最終資料で確定する進め方もあります。スピードを重視するなら、追加資料を一括・正確に出すことが最短ルートです。

審査通過率の考え方と注意点

案件再審と通過率は切り離せませんが、通過率は業者・商品・時期・案件属性によって大きく異なるため、一律の数値断定はできません。実務上の着眼点は次の通りです。

• 再審は「マイナス」だけでなく「プラス」にも働く：確定決算の改善や売掛先の与信上昇で条件が良化することもある
• 条件変更の影響を見積もる：支払サイト延伸はリスク増として捉えられやすい、逆に現金回収化はプラス
• 開示の一貫性：説明と書類の整合が高いほど通過可能性は上がる
• 留保からの巻き返し：具体的な解消策（担保的書面、支払実績の証憑）を提示できるかが鍵

「通過率を上げる」意識より、「論点をつぶす」意識で準備する方が成果に直結します。

実務対応：再審と言われたときのチェックリスト

• 条件変更の全体像を整理：何が、いつから、どの程度変わったのかを1枚にまとめる
• 書類の最新版を揃える：決算書・試算表・資金繰り表・契約書・発注/納品/検収/請求の一式
• 売掛先情報のアップデート：支払実績、担当名、支払サイト、取引基本契約の変更有無
• リスク論点への先回り回答：遅延の理由と再発防止、在庫や検収の証明、相殺リスクのコントロール
• 時系列の明確化：いつ判明し、誰が承認し、現在どうなっているか
• 代替案の用意：希望条件が通らない場合の第2案（減額、分割実行、サイト短縮 等）

よくある誤解とリスク管理

• 「再審＝否決」ではない：判断材料を増やして結論精度を上げる手続き。むしろ適切な再審はトラブル防止に有効
• 「書類は多ければ良い」わけではない：関連性の高い最新版を、重複なく整えることが重要
• 「売掛先の遅延は致命的」かは状況次第：一過性か構造的か、代替の回収ルートがあるかで評価が変わる
• 「条件は先に固める」のが基本：途中変更は再審を招き、スケジュールに影響する

ファクタリングならではの再審ポイント（2社間・3社間）

ファクタリングは売掛債権の実在性と回収可能性が命です。方式により着眼点が変わります。

• 2社間（通知なし）：債権譲渡禁止・相殺条項、請求の正当性、入金トレースの透明性、入金口座の管理が重要
• 3社間（通知あり）：通知受領の有無、債務者の承諾、検収プロセスの明確さ、過去の支払実績の整合

いずれも、検収完了の裏づけ（検収書・受領印・受領メール等）が弱いと再審で足止めされやすい領域です。

提出が求められやすい資料の具体例

• 会社側：登記簿、定款、直近決算・試算表、資金繰り表、納税証明、主要取引先一覧、借入明細
• 取引・債権側：基本契約、個別注文書、納品書、検収書、請求書、支払条件の通知
• 補足：商流図（フロー図）、倉庫入出庫記録、出荷伝票、メール等のやり取り（必要箇所のみ）

「請求→入金」までの一連の動きを、第三者が見ても辿れることが理想です。

再審で条件が変わる典型パターンと対応

• 手数料率の見直し：売掛先リスク上昇やサイト延伸で上振れしやすい。対応策は、検収強化や入金証跡の明確化
• 買取率（アドバンス率）の調整：不確実性が高いと控えめに。部分実行や分割実行で代替する手も
• モニタリング条件の追加：月次試算表の提出、入金レポートの定期提出などで透明性を確保

社内・社外コミュニケーションのコツ

• 論点先出し：不安要素は自ら説明し、是正策とセットで提示
• 一貫したメッセージ：担当者間で説明がブレないよう、要点メモを共有
• 期限の明確化：提出物と期日を合意し、遅れそうなら早めに連絡

FAQ（よくある質問）

Q. 再審になったら、審査は最初からやり直しですか？

A. 変更点の大きさによります。限定的な更新であれば一部工程の再実施で済むこともありますが、枠や条件を大きく変える場合はフルに近い見直しになることがあります。

Q. 再審の方が否決になりやすいのでしょうか？

A. 一概には言えません。リスク増の要因が強い場合は厳しくなりますが、プラス材料（確定決算の改善、遅延解消の証跡など）で条件が良化するケースもあります。

Q. 早く通したいときに有効な方法は？

A. 追加資料を網羅的かつ最新の状態で、一度に提出するのが最短です。論点別に目次を付けた資料束（目録）を作ると、審査側の確認時間が短縮されます。

Q. 何度も再審になるのを防ぐには？

A. 申込前に条件・書類・時系列を固め、想定問答を準備しましょう。売掛先の与信や支払実績は事前に確認し、変更点はタイムリーに共有するのが有効です。

まとめ：案件再審は「危険信号」ではなく「精度向上のチャンス」

案件再審は、単なる足止めではありません。新しい情報で判断をアップデートし、取引の安全性と透明性を高める大切な工程です。要点は3つ。1）なぜ再審なのか（トリガー）を明確にする、2）論点を先回りして資料で裏づける、3）期限と代替案を持って進行管理する。これができれば、通過可能性は大きく高まります。ファクタリングや与信審査に不安を感じたら、本記事のチェックリストと資料例を土台に、落ち着いて一つずつ整えていきましょう。きちんと準備すれば、再審はむしろ味方になってくれます。

この記事の監修者

平松 樹 （ひらまつ いつき）

資金調達アドバイザー／元メガバンク法人営業・審査担当

金融実務20年以上。メガバンクで法人融資・審査・再生支援を担当後、独立。中小企業の資金繰り改善に特化し、請求書買取（ファクタリング）・ABL・リスケ・補助金活用まで一気通貫で支援。建設・運送・IT・医療など500社超の案件を伴走し、累計支援額は数十億円規模。入金サイト長期化や赤字決算・債務超過局面でも、債権譲渡禁止特約や民法改正（債権法）への実務対応、与信・反社/不当条項チェック、適正手数料レンジの見立てまで具体策を提示。安全性・適法性・スピードのバランスを重視し、「即日資金化」と「継続的な資金繰り安定」の両立を設計するのが強み。

所属：ファクタリングナビ